🕊 平和の子 、ミール🕊  ~新編集版~
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 えっ!
 国連総会決議に向けて準備を進めていた不曲は一瞬固まってしまった。
 それほど衝撃的な内容だった。
 なんと、あのクリミア大橋が爆破されたのだ。
 ニュース映像には炎に包まれた燃料輸送列車と崩落した自動車橋が映し出されていた。
 
 どういうこと?
 思わず自問したが、詳細はまだ判明しておらず、その時走行していたトラックの運転手とそれに並ぶように走っていた自動車の乗員が死亡したことだけが伝えられていた。

 ウクライナがやったの?
 また自問したが、攻撃したのが誰なのかはまったくわかっていなかった。
 ただ、ロシア政権与党『統一ロシア』の下院議員が「予告されたテロであり、宣戦布告だ」と暗にウクライナの関与を仄めかしているということは伝えられていた。
 
 それにしても……、
 10月7日にプーチンが70回目の誕生日を迎えたばかりというタイミングでこのようなことが起こるとは予想もできなかった。
 その日プーチンは旧ソ連諸国の首脳との非公式会合を開いて祝辞とお祝いの品を贈られたばかりなのだ。
 それに、ロシア正教会最高位のキリル総主教から「神があなたを権力の座に就かせた。国と国民の運命にとって特別重要で、大きな責任を伴う職務を果たせるようにするためだ」という特別なメッセージを貰ったばかりなのだ。
 侵攻がうまくいっていないので喜びも半減といったところかもしれないが、それでも古希(こき)を迎えられたことは嬉しいに違いない。
 なのに、よりによって誕生日の翌日に心血を注いだクリミア大橋が爆破されるとは思いもしなかっただろう。
 先日のノーベル賞といい、今回の爆破といい、顔に泥を塗るようなことが続いているのだ。

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