🕊 平和の子 、ミール🕊  ~新編集版~
「やっと届いたか」
 総理は胸を撫で下ろすような声を出した。
 それは、アメリカが供与した防空ミサイルシステム『ナサムス』がウクライナに到着したという11月7日の情報に対してであり、更にスペインやノルウェーからも届いたという情報に対してのものだった。
「なんとか間に合いましたね」
 芯賀もほっと胸を撫で下ろした。
「ああ、これで被害の拡大を防げるかもしれない」
 総理はナサムスに期待を寄せているようだった。
 アメリカとノルウェーが共同開発した中高度防空ミサイルシステムで、空対空ミサイルを初めて地上発射化しており、更に、分散・ネットワーク化されている優れものだからだ。
「今回アメリカが提供したのは2基のようですが、さらに6基の追加供与をすると表明しています。性能についても、ドローンから弾道ミサイル、戦闘機まであらゆるものを空中で撃ち落とすことができると言われておりますので、かなり期待できそうです」
「そうだな。イランや北朝鮮からミサイルやドローンが次々に運ばれているようだから、ぎりぎり間に合ったということかもしれないな」
「はい、そうだと思います。ですので、ウクライナの国防相もかなりの期待を表明していますし、電力をはじめとしたインフラ施設の防衛力が上がれば反転攻勢にも弾みがつくものと思われます」
「そうだな。ここを乗り切れば一気に形勢が動く可能性がある。勝負所に来たな」
 机の上に広げたウクライナの戦況表を総理と共に見ながら、芯賀は次の一手に思いを馳せた。

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