🕊 平和の子 、ミール🕊  ~新編集版~
 インドか……、
 もう一つの大きな抜け道の存在に改めて気づかされた。
 首相がわざわざ足を運んだのに……、
 インドの首相に対面した日のことが浮かんできた。
 それは3月19日のことだった。
 デリーで2時間近く会談したあと、両首脳は共同声明を発出した。
『日印特別戦略的グローバル・パートナーシップの構築』
『自由で開かれたインド太平洋の実現』
『ウクライナへの一方的な侵略の非難と戦闘の即時停止』
『東シナ海や南シナ海における一方的な現状変更への反対』
『北朝鮮の核開発と弾道ミサイル発射への非難』
『ミャンマー情勢の事態打開に向けた緊密な連携』
『国連安保理改革の実現と両国の常任理事国入りの確認』
 などが主な内容で、それは不安定化する世界に向けた強力なメッセージとなるものであった。
 しかし、インドとロシアの関係を崩していくのは簡単ではない。
 不曲には複雑に絡み合った糸の解き方を思い浮かべることができなかった。
 
 首相はどう解こうとされるのか……、
 日本の官邸がある方向に視線を向けたが、総理の苦悩を思うとじっとしてはいられなかった。

「インド大使に会っていただけるよう、大使を説得していただけないでしょうか?」
 不曲は首席補佐官に頭を下げた。


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