異世界で言葉が通じないなんてハードすぎます!
 ドラゴンはそのまま木の中に突っ込み、多くの木を薙ぎ倒す。
 鬼気迫る形相のルイスにディーは身震いする。

 一斉に歓声を上げる騎士達。
 ミサキを洞窟に運んだビルとガイルは歓声でドラゴンを倒した事を知った。

「ミサキ、大丈夫。ドラゴン、ルイス、OK」
 たぶん伝わったのだろう。
 ミサキは小さく頷くとゆっくりと目を閉じる。

「ミサキ!」
「大丈夫、気を失っただけだ。ガイル、水を準備。あとそこの鞄を取ってくれ」
 ビルはミサキの服をナイフで切り、背中を出す。
 思ったよりも深い傷にビルは顔を顰めた。

 傷を洗い流し、ミサキの傷を縫う。
 気絶していてよかったかもしれない。
 男でも耐えがたい状況にビルは眉間にシワを寄せた。

「ガイル、この粉を少量の水で溶いてくれ」
「ビル、これで良いか?」
「あぁ、あと包帯……あぁ、ダメだな」
 服を脱がして包帯を巻くことはできない。
 悩んだ結果、服の上からサラシを巻く事にした。

 茶色の痛み止めを縫合した部分に塗り込みガーゼを置く。
 ガイルに肩を支えてもらい、なんとかサラシを巻いた。

「この後、熱が出ると思う」
「……ミサキは助かるよな?」
 ガイルの質問にビルは最善を尽くすとだけ答えた。

「ディー、今日はもう暗くなる。滝の上は明日の朝で良いか?」
「あぁ。ここは任せろ、早くミサキのところへ」
 ルイスは聖剣をギュッと握ると、鞘に戻し大きく息を吐いた。
 
「任せる、すまない」
 辛そうな声でディーに頼むとルイスは洞窟へ急ぐ。

「ビル! ミサキは?」
 洞窟の床にうつ伏せで寝かされたミサキは肩から背中にかけてサラシが巻かれていた。

「傷は?」
「今、縫って痛み止めをつけました」
「縫……」
 絶句するルイスにビルは今は気絶していること、この後おそらく熱が出る事を説明する。

「……そうか、ありがとう」
 ルイスはミサキの隣に座り、右手で顔を覆った。
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