異世界で言葉が通じないなんてハードすぎます!

36. 水

 滝の上はドラゴンが巣作りをしていたため木々が川を堰き止め、別の方向へ水が流れ出ていた。
 
 木々や岩を少しずつ退けていく。
 1日では作業が終わらず、2日目は作業と帰りの準備の2グループに分かれた。
 始めはチョロチョロと水が滲み出ていたが、どんどん木々を押し開き、水が溢れ出す。

「よっしゃ!」
 これで水不足は解消だとジョンがガッツポーズをすると、ディーも正常な流れになった川を見て安堵した。

 これで任務完了だ。

「早く街へ戻ろう」
 タープで作った担架にミサキをうつ伏せで乗せ、4人で担架の四隅を持ち、他のメンバーで素材を分担した。

 高熱のミサキを運ぶのは可哀想だったが急いで山を降りる。
 この山はこれからどんどん冬になる。
 食糧も手に入りにくくなり、薬草の調達も難しくなるからだ。

 行きよりも少し早いペースで降りたが、それでもガーウィの街までは4日。
 ルイス、ディー、ビルが交代で夜中もミサキの看病を行ったが、高熱のせいなのか、なかなか意識は戻らなかった。

 宿屋に着く頃にはようやく微熱に。

「……ミサキ?」
 うっすら目を開けたミサキの顔を覗き込む。

「……ルイス……ドラゴン……」
「大丈夫」
 小さな声で尋ねたミサキに大丈夫だと答えると、ミサキはまた目を閉じてしまった。

「危険な状態は抜けました」
 ビルは命の危機はもうないだろうとルイスとディーに話す。
 ミサキの無事を聞いた騎士達も全員安堵し、ようやく元気を取り戻した。

「よっしゃー! ミサキの回復を願って飲むぞー!」
「俺は食う! ミサキを早くアンベルの街へ連れて行けるように」
「俺も食うぞ! バテてらんねぇ!」
 騎士達の様子を聞いたルイスは少しの間ディーにミサキを任せて街へ行った。
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