異世界で言葉が通じないなんてハードすぎます!
『えぇ~、ズルいっす』
『俺達もミサキと住む』
 今度はディーが2人の家の周りにぐるっと線を引くと、線の外側に棒人間を描き、ガイル、ユーイ……と名前を告げた。

『ミサキの護衛っすか?』
『俺、やる!』
『俺も俺も!』
 ドラゴン討伐の後の所属は確定していない。
 そのまま第二王子ルイスの護衛になるか、元の騎士団に戻るか、退職するか本人たちが選ぶことができるようにと国王陛下が配慮したためだ。

 ルイスだけでなく彼らは全員、国の英雄。
 この先、働かなくても生活は保証されている。
 もちろん聖女ミサキも。
 
「ミサキ……レオナルド?」
 2人の絵を指差しながらルイスが寂しそうに笑う。

 驚いたミサキが目を見開くと、ディーがルイスの背中をバシッと叩いた。

「ミサキ、ルイ!」
 手を腰に当てながら言い直すディー。

『隊長じゃないと、この周りって第二騎士団だろ?』
『順番なかなか回って来ないじゃん』
「ミサキ、ジョン!」
「ミサキ、ガイル!」
 だんだんよくわからなくなってきたところで酒と料理が運ばれ、そのままワイワイ盛り上がることとなった。

「遠慮している場合か」
 早く腹を括れと言うディーにルイスの青い眼が揺れた。

 自分は第二王子。
 第一王子レオナルドの想い人であるミサキを奪うことはできない。
 グッと拳を握るルイスに、ワインを飲みながらディーは呟いた。
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