異世界で言葉が通じないなんてハードすぎます!
「一生に一度くらい、兄に遠慮せずワガママを言ってみたらどうだ? ドラゴンを倒してきたんだぞ?」
 そのくらいの褒美は貰っても良いはずだとディーが言う。

「……褒美……」
「命を懸けて国を救ったんだ。好きな女くらい貰えよ」
 ルイスの肩にポンと手を置きながらディーはワイングラスを持って立ち上がった。

 左手でフォークを持ち、騎士達と楽しそうに食事をするミサキ。
 ルイスはテーブルの上でグッと拳を握った。

 翌朝、久しぶりにミサキはみんなと歩いた。
 ミサキに合わせて歩いたので、2時間弱で移動できる距離を結局3時間かけて歩いた。
 遅めのお昼ご飯を食べてから馬車に乗り込む。

「な、な、なんで」
 ルイスの左膝の上に乗せられ、腰をしっかりと支えられたミサキは真っ赤な顔で焦った。

 馬車は4人乗り。
 ルイス、ディーと3人なので普通に座れるはずだ。

『揺れる、痛い、OK?』
 OK以外知らない単語だが、ディーのジェスチャーで馬車は揺れるから痛くなるみたいな雰囲気を察したミサキはチラッと密着したルイスを見上げた。

 胸にミサキの頭を押し付け、もたれさせるルイス。

「OK?」
 頭の上から響く低音ボイス。

 全然OKじゃなーい!
 何? このイチャラブな体勢!
 しかもディーの前!
 
 動き始めた馬車の振動で「うっ」とうめき声をあげたミサキは、すぐに椅子に座るのは無理だったと悟った。

 重いだろうなと思いつつ、ルイスに身体を預ける。
 温かくて、ルイスの心臓の音が心地よくなったミサキは、いつの間にか眠ってしまった。
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