異世界で言葉が通じないなんてハードすぎます!
 裏口から建物に戻ると、同じ白いワンピースを着たお姉さん達が歩いていく。
 ミサキもエマに連れられ同じ方向へ向かった。

『あなたに女神のご加護がありますように』
「あぁ、ありがとう」
 街の人が何かを手渡し、お姉さんは受け取っていた。
 他のお姉さん達も同じだ。
 街の人が並んでいて、両手を合わせてお祈りのようなポーズをすると何かがもらえる。

 アイドルの握手会みたいだ。
 人気ありなしがありそうな行列の人数。
 綺麗だなと思っていたお姉さんはやっぱり行列が長い!

『カルおじいさん、こんにちは』
『今日はエマちゃんいないかと思ったよ』
『あのね、聖女様が来てくださったの』
『聖女様? それはすごい』
 エマがミサキの方を振り向くと、おじいさんとミサキは目が合った。
 よくわからないけれどミサキはペコッと会釈しておく。

『はははは。これはこれは腰の低い聖女様だ』
『本当に聖女さまよ』

 よくわからないけれど、楽しそうだ。
 やっぱりアイドルの握手会みたい。

『あなたに女神のご加護がありますように』
 エマが両手を組んで何かを唱えるので、ミサキもよくわからないが手を組んで真似をした。
 カルじいさんがエマに差し出したのはさつまいも。
 あぁ、こうやってここの人達の食事ができるんだ。

『ハンスさん、どうしたの? その腕!』
『あー、これは仕事中に木材が倒れてきてさ。仕事できねぇし、困ったから早く治るようにお祈り頼むわ。っと、しまった』
 腕を吊っていた布がパラっと外れ、ミサキの足元にふわっと飛ぶ。
 ミサキは布を拾い、おじさんにつけようと左腕の下に布を入れた。

『この子、新人?』
『聖女様よ』
『へぇ、そりゃすげぇや』
 信じていないハンスが笑うと、エマは本当よと微笑んだ。

 お祈りをし、ハンスからチーズをもらう。
 もらったものを横の棚に置くと、エマは次の人にまた祈りを捧げた。

 大変だなぁ。
 エマの行列は少しだけ。
 あの綺麗なお姉さんの列は途切れない。
 一人一人にかける時間も長いし、人気なんだろうな。

 お祈りが終わった人から順に、もらったものを持ち奥へと戻る。
 キッチンの横にあった食材置き場にそれぞれもらったものを入れたあとミサキは部屋へと戻った。
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