異世界で言葉が通じないなんてハードすぎます!
『ルイス様、聖女様は言葉がわかりません』
 急いで追いかけてきた教皇の『聖女』の言葉に、ルイスの眉間のシワはますます深くなった。

『勝手に名乗っているのか?』
『ち、違います。本当に治癒能力を持った聖女様です』

 ジッと見つめてくる男性はイケメンだが怖そうだ。
 この人が持っている剣は何だろう?
 
 さっきからこの剣と共鳴しているような気がする。
 ドクドクと高鳴る心臓はそろそろ口から飛び出そうだ。

『治癒か』
 本当にそんな力があるなら良いけれどなとルイスは肩をすくめるとミサキから離れた。
 
『教皇、祈りを頼む』
『はい。明日から討伐に出かけられるのですか?』
『いや、明後日だ。このあと王宮へ行く』
『では私もご挨拶に同行しましょう』
 教皇に奥へと案内されるルイスと補佐ディー。
 数歩進んだルイスはミサキの方をもう一度見た。

 細くて小さいただの子供だ。
 聖女なわけないだろう。
 本当にそんな者がいるのなら、伝説通りに水不足を解消してくれ。

「好みの女だったか?」
 珍しいなと笑うディーに、ルイスはフンッと鼻を鳴らした。

「少し気になっただけだ」  
 ルイスは聖剣に触れながら奥へと歩く。

 男性達が奥へと歩いていくとエマが急いでミサキの元へ戻った。

 エマー! 遅いよぉ!
 怖そうな、厳しそうな人だった。
 もう一人の人はよく見えなかったけれど。

 ミサキは雑巾を手に取り、エマと掃除道具を片付けた。
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