異世界で言葉が通じないなんてハードすぎます!

19. いない

「……追い出した?」
 教皇の目の前には泣きじゃくるエマ。

「ミサキ……」
 一体どこへとレオナルドが額を押さえる。
 イケメンの苦悩する姿をマリーはうっとりと見つめた。

「どちらの方へ行った?」
「裏口から右へ」
 教皇の質問にエマが答えると、レオナルドは補佐官チャールズを見る。
 ルイスはレオナルドを励ますかのように肩をポンと叩いた。

「聖女を追い出したこいつらはどうするんだ?」
「しっかり処罰いたします」
 頭を下げる教皇にルイスは溜息をついた。
 
 レオナルドの嫁なら王子妃。
 不敬罪で彼女達を捕らえる事もできるが、レオナルドはそれどころじゃないようだ。

 そんなにあの少女が良いのか?
 普通のただの小さい子供だったが。

 レオナルドの婚約者は財務大臣の娘キャサリン。
 少し気が強そうだが美人で身のこなしも優雅な女。

 確かに伝承では王子と聖女が結婚するが、正妃とは書かれていない。
 キャサリンと婚約破棄をしてまであんな少女が良いとは。

 もっと話してみれば良かった。
 ……いや、言葉が通じないんだったな。

「レオ、戻ろう」
 ここにいても仕方がないというルイスにレオナルドは気のない返事をした。

「すぐに見つかるさ」
「あぁ、……そうだな」
 聖女に会えずに気を落とすレオナルドを連れ、馬車に乗る。
 補佐官チャールズは教皇にお辞儀をしてから馬車へ乗り込んだ。
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