異世界で言葉が通じないなんてハードすぎます!
「ありがとう、いたたきます」
 ミサキは黒い眼を揺らしながら、久しぶりの食事にスプーンを入れる。
 ふーふーしながら口に含むとミサキは「おいしい」と呟いた。
 
 がんばって言葉を覚えたのだろうか?
 「いただきます」を「いたたきます」と言い間違えているが。

 野営の食事は調味料が少なく、決してうまいものではない。
 シンプルな素材の味が多いのだ。
 とても貴族の娘が口にするようなものではないのに、文句も言わずに食べるのか。
 しばらく何も食べていないから質素なスープでも良いというだけだろうか?

『隊長、できました』
 騎士が持っているのは干し肉と野菜を炒めたもの。
 流石にコレは食べないか?
 これは鹿肉の干し肉だ。
 日持ちするので騎士の中ではメジャーな干し肉だが、獣臭いので貴族は食べない。

「ありがとう」
 騎士に手渡されたミサキはペコッと会釈した。

 騎士にもお礼?
 ルイスとディーはミサキの動きをジッと観察した。

 受け取った野菜炒めを疑うことなく食べはじめるミサキ。
 少し硬い干し肉を特に気にする様子もない。
 
 ……不思議な娘。
 綺麗に食べ終わったミサキは手を合わせて『ごちそうさまでした』とお辞儀した。
 
 なんだ? 今のは?
 
 食器を重ねて立ち上がるミサキ。
 自分で片付けるのか?

 テントから出て、鍋の近くの騎士に食器を見せている。

 おかわりかと思ったが、違うみたいだ。
 そのまま食器を洗っている騎士の方へ行くミサキをテントの中からルイスとディーは眺める。

「なんだか不思議な子だね」
 自分の以外の皿も洗っていそうだとディーは笑った。
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