異世界で言葉が通じないなんてハードすぎます!
「連れていくか?」
 治癒が使えるなら居た方が助かるというディーに、ルイスは悩んだ。

「レオの元に帰した方がいいだろう」
「レオナルド様?」
 首を傾げるディーにルイスは教会の後の話をした。
 あの日教会から出た後、ルイスと教皇だけ王宮へ行き、ディーは家へ帰ったので知らないのだ。

「え? 想い人?」
 だが、ここから王宮へ返すとしても騎士一人では心もとない。
 二人行かせると戦力が厳しくなる。
 かと言って全員で戻るのも困る。

「連れて行こう」
 次の街で王宮宛に聖女が見つかったと手紙を書いておくというディー。

「街で待たせて迎えに来させれば……」
「言葉がわからないから一人じゃ無理だよ」
 また逃げるくらいなら連れて行った方が安全だというディーにルイスは渋々頷いた。

「まぁ、お前がそういうなら……」
 作戦を考えるのは優秀な補佐ディーの得意分野。
 ディーがそうした方が良いというならそうなのだろう。
 ディーは現在の騎士団長の次男。
 剣の腕前はもちろんだが戦術にも長け、全体のバランスを保つのも上手い。

 食器を洗い終わったミサキがテントへ戻る。
 テントの入口にいたルイスとディーにペコッとお辞儀をすると、そのまま向きを変えて歩き始めた。

『待て、待て、待て。どこへ行く?』
 ミサキの手を慌ててルイスが捕まえるとミサキは首を傾げた。

「ここ、いる、OK」
 ディーがゆっくりミサキにわかりそうな単語で話しかけると、ミサキは泣きそうな顔でお礼を言った。

『流石だな』
 通じてるぞと感心するルイス。

『ただひとつだけ問題が』
『何だ?』
『ルイが一緒に寝てくれ』
「は?」
 テントの都合だと微笑むディーに、ルイスは額を押さえながら苦笑した。
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