異世界で言葉が通じないなんてハードすぎます!

23. 捕まる

「服がでかいな」
「かわいいでしょ」
 ディーのぶかぶかの服を着て食器を洗うミサキを眺めながら、ルイスとディーは今日の移動について相談する。
 ミサキの歩幅も考慮して、今日はこの辺りでテントを張りたいとディーが地図を指差すとルイスは頷いた。

「みんなには、あの子は聖女だから討伐に連れていくと言ってある」
 簡単な単語しかわからないというのも昨晩伝えたと言うとルイスは「そうか」と気のない返事をした。

「……反対?」
「危険だからな」
 兄レオナルドの想い人に怪我をさせるわけにはいかない。
 早くミサキに会わせてレオナルドを安心させたい。

「今、あの子を王宮に返しても、あの子はまた辛くなると思うよ?」
「何か聞いたのか?」
「いや。何にも」
 ただそう思っただけだとディーが肩をすくめる。

「聖女の功績がなければ、あの子は王子妃になれない」
「……そうだな」
 ルイスは小さく座り込むミサキを見ながら溜息をついた。

 どうしよう。
 みんなが荷物をまとめている。
 たぶんもう移動するんだよね。
 ペコリとお辞儀をしたミサキはここを去ろうと草むらの方に歩き出した。

『待て!』
 ルイスに腕を掴まれたミサキは驚いて「ひゃっ」と声を上げる。

『こいつ、出て行く気だぞ?』
『まさか』
 ルイスの言葉に驚くディー。

「行く」
 みんなで。みたいなイメージで騎士達をぐるっと指差したがミサキには伝わらない。

『んー、任せた! ルイ』
 ディーはミサキの手を取り、ルイスの手に乗せた。
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