異世界で言葉が通じないなんてハードすぎます!
「は? おい、ディー!」
『捕まえてて』
 騎士達に指示を出しあっという間にテントを畳み荷物を準備する。

「はい、OK」
『OKじゃねぇよ』
 ミサキの手を掴んだまま文句を言うルイス。

 やっぱり怒っている?
 ミサキは掴まれた手をじっと見ながら、これ以上怒られないように大人しくすることにした。

 出発しても、なぜか掴んだ手は離されなかった。

 何で? 何で?
 逃げないように?

 わからないままみんなと歩く。
 途中で休憩をしたり、水を飲ませてくれたり、バナナのような木の実を取ってくれたが、いつの間にか手がまた捕まっている。

 なんでー?

『おい、ディー。困ってるぞ。代われ』
『アンジーに怒られたくないからパス』
 アンジーはディーの妻。
 確かに聖女とはいえ別の女性と手を繋いでいたと騎士の誰かがバラせば怒られるだろう。

『誰か他の奴に』
『恋仲になったらルイの兄上殿が怒るよ』
 レオナルド殿下の想い人であるミサキと騎士が恋仲になったら騎士が可哀想だ。
 お咎めは免れない。

『ね、ルイが適任』
 ディーがニッコリ微笑むとルイスの眉間にシワが寄った。

 また怒った顔。
 
 ……迷惑……だよね。
 急に汚い姿で現れて、言葉も話せない、何もできない女。
 自分でもいらないと思う。
 
 ミサキは繋いだ手とルイスの眉間のシワを交互に見た後、申し訳なさそうに目を伏せた。
 
「ミサキ、OK。ルイス、ノー」
 ディーがミサキの両頬に手を置き、顔を上げさせる。
 気にしなくていいよって事だよね。

 ミサキは泣きそうな顔で微笑んだ。
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