異世界で言葉が通じないなんてハードすぎます!
 火が焚かれ、鍋が準備される。
 すぐ食べちゃうんだ。
 その素早さにミサキは圧倒された。

「あー、怖い?」
 ディーに聞かれたミサキは首を横に振った。
 鳥も魚も生き物を頂くというのはこういうことだ。
 実際にお肉になる場面は見たことがないけれど。

 すぐに鍋に入る肉と薄切りにされる肉。
 薄切り肉を板の上に並べる騎士。

 並べるだけならできるかも?
 ミサキが手伝い始めると騎士達の驚く顔が見えた。

「ノー?」
 ミサキが戸惑うと昨日足を怪我していたジョンがミサキに肉を手渡した。
 一緒に並べながらOKと微笑んでくれる。
 遠慮していた他の騎士達もミサキに単語で話しかけてくれるようになった。

「あーらら。あっという間に仲良くなっちゃいそう」
 一生懸命で可愛いもんねとディーが言うと、ルイスの眉が片方上がった。
 
 イノシシを食べるのは初めてだ。
 思ったよりも柔らかくて臭くない。
 ミサキは「おいしい」と思わずつぶやいた。

『可愛いなぁ』
『どんどん食べな!』
『こっちの方がうまいって』
「え? 多い、多いっ」
 お椀に追加される肉に焦ったミサキが立ち上がると、騎士達から笑いが起こった。

『ねぇねぇ、聖女様の名前はミサキ?』
 隊長と副隊長が呼んでいるよね? と聞かれたミサキは前半はわからなかったが「ミサキ」と答えた。
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