異世界で言葉が通じないなんてハードすぎます!
「早っ」
 可愛いとディーが笑うと、ルイスは目を伏せた。

「ルイ、どうした?」
「……こんな細いと思わなかった」
 歩くのもだいぶ無理させていたと反省するルイス。

「何にも文句を言わないね、この子」
「ワンピースも装飾品も欲しがらなかった」
 一応、売っている店には連れて行ったとルイスが言うとディーは驚いた顔をした。

 ルイスが連れて行ったのも驚きだが、行ったのに欲しがらなかったミサキにも驚きだ。

「ノートとペン……ね」
 そんなものを欲しがるのは補佐官や文官くらいだろう。
 平民は文字が書けないが、この子は書けるということだ。
 不思議だなぁとディーが笑う。
 
「おやすみルイ」
「あぁ」
 ルイスもディーもベッドで眠るのは久しぶり。
 今日はゆっくり眠ろうと、二人は早々に電気を消した。

 深夜2時過ぎ。
 小さなカタッという音で目を覚ましたディーはベッド脇に置いた剣を手に取った。

 カシャンと鍵の開く音。
 ゆっくりと回るノブ。
 静かに開いた扉の隙間からディーは剣を突きつけた。

「ひっ!」
「静かにしてくれる? うちの可愛い子が寝ているんだ」
 ディーが微笑むと、引き攣った顔で夜盗は目を泳がせた。
< 77 / 131 >

この作品をシェア

pagetop