異世界で言葉が通じないなんてハードすぎます!
「おはよう、ミサキ」
「おはよう、ルイス、ディー」
 いつものように挨拶し、着替えて朝食を食べる。
 出発前にシャワーを浴びさせてもらい、サイズがぴったりの服にブーツ。
 買ってもらったカバンに荷物を詰めて宿を出発した。

『なぁんで、手を繋いでいるかなぁ』
『絶対、街でなんかあったっしょ』
 くそぉ。と悔しがる騎士達。
 
『ズルいっすよ、隊長! 日替わりにしよ』
『はいはい。ここからは運が悪いとビッグベアとかサーベルタイガーとか出るからね。一番強いルイが聖女様を守るよ~』
『えぇぇ~。そりゃないっすよ、副隊長』
『出るって言っても1年に1回旅人が遭遇するかどうかでしょ~』
 楽しそうな騎士達を不思議そうに見ているミサキの手をルイスはしっかりと握った。
 
 夜は今まで通りルイスとミサキが同じテント。
 ただ今までと違うのは寝る前に少しずつ言葉を勉強するようになった。
 ノートに一生懸命メモし、発音を練習するミサキ。
 5日後に次の街へ着く頃には、騎士達も驚くほど急成長していた。

「ミサキ、オレンジ食べる? りんご?」
「りんご」
 クレイグの質問にスムーズに答えたミサキは皮を剥いてもらったリンゴを受け取りながら微笑んだ。

「おいしい、冷たい」
「そっか」
 最初に比べればかなり会話ができるようになったと思う。
 毎晩言葉を教えてくれるルイスのおかげだ。

『今年は例年よりも寒いらしい』
『全員コートがもう一枚あった方が良いかもしれないな』
 ドラゴンの住む山はここからあと5~7日。
 山の麓に居れば5日だが、奥へ進めば進むほど寒い地域になる。

『標高も高くなる。明後日の出発までに各自で防寒対策をするように』
『ミサキと一緒に買い物へ行きたい!』
 ジョンが手を上げると、数人の騎士が俺も! と手を上げた。

『んー、明日は俺と行くところがあるからダメ』
『そりゃないっすよ、副隊長!』
 ディーが却下すると騎士達が唸る。

『偶然会えたらラッキーってことで』
『じゃ、会えたら一緒にケーキ食っていいっすか?』
「いいよ」
 よっしゃーと盛り上がる騎士達に、ミサキは首を傾げた。

 今回の宿もルイスとディーと3人で一部屋。
 前の宿よりも少し狭い部屋でベッドも固めだったが、今日も5日ぶりのベッドだ。
 ミサキはすぐに眠りについた。
 
「早っ」
 今日は言葉の勉強をする前に寝てしまったねと笑うディー。
 ルイスは「そうだな」と言いながらミサキの顔にかかった髪をサラッと退けた。
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