異世界で言葉が通じないなんてハードすぎます!
 私がこの世界に召喚されたのはドラゴンを倒す勇者ルイスと一緒に行くため。
 聖女が勇者ルイスの怪我を治してハッピーエンドということだ。
 
 ドラゴン、勇者、聖女。
 異世界の定番なのは間違いない。

 じゃぁ、ルイスと結婚するってこと?
 やっぱりレオナルドではなかったんだ。
 あのまま王宮にいたら、ルイスを紹介されて一緒に王宮からみんなと一緒に来て、ドラゴンの元へ行ったんだ。

 王宮でレオナルドが絵本を見せたのは言葉が通じないから。
 お前の役割はこれだぞと教えたかったからだ。

『……レオナルドは別に私のことなんて何とも思っていなかったんだ……』
 ミサキの声は小さかったが隣にいたディーはもちろんルイスにも聞こえるほど店内は静かだった。

 好きじゃないなら、あんな風に優しくしないで欲しかった。
 会うたびに頬にキスされたから勘違いしてしまった。
 ただの挨拶だったのに。

 聖女だから、ドラゴンを倒す人達と一緒に行かせたかったから優しくしていただけ。
 綺麗なお姉さんと歩いていたレオナルドを思い出すと涙が堪えきれなくなる。
 
 とうとう泣き出したミサキを見たルイスは差し出していた手を戻し、拳を握った。
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