異世界で言葉が通じないなんてハードすぎます!
「ミサキ、ごめん」
 ディーが謝るとミサキは首を横に振った。

 ディーは何も悪くない。
 ただ自分が勘違いしていただけだ。
 さようならと書いて飛び出しておきながら、まだ期待していた自分に苦笑する。

『……ディー、荷物を頼む』
 ルイスは買い物の荷物を全て本屋の床に置くと、細い通路に入りミサキの手首を掴んだ。

 強引に引っ張り、ミサキを通路から出す。
 ぽふんとミサキの顔がルイスの逞しい胸に当たった。

『王宮に戻ったらレオナルドと結婚出来る。絶対にドラゴンを倒して無事に帰してやる。だからドラゴンを倒すまで、王宮に帰るまでは俺の側にいてくれ』
 ギュッとミサキを抱きしめながら懇願するルイス。

『……何て言ってるの?』
 聞き取れるのはレオナルド、ドラゴンだけ。

『わかんない! わかんないよ!』
 嗚咽を上げて泣き始めたミサキを抱き上げるとルイスは本屋を出た。
 荷物を持ち、ディーが慌てて追いかける。

 途中で数人の騎士に会ったがディーが首を横に振り、誰も声をかけることができなかった。

 宿に戻りミサキをベッドへ置く。
 すぐに布団を被り隠れてしまったミサキをルイスは切なそうな顔で見つめた。

「ルイ、ごめん」
『いや、教えずに連れて行くのはダメだ。危険な場所に行くんだ』
 教えるべきだったと言いながらもルイスは拳を握った。

「ミサキ……」
 ルイスが呼んでも当然返事はない。

『少しそっとしておこう』
 ディーの言葉にルイスは頷いた。
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