異世界で言葉が通じないなんてハードすぎます!
 本屋から戻ってから1時間。
 泣き声は聞こえなくなったが、呼びかけても返事はなかった。

 交代でディーとルイスは食事へ行く。
 騎士達に何があったか聞かれたディーは、我々の任務を話しただけだと説明した。
 ミサキはドラゴンの討伐だと知らなかったと。

「……ミサキ、夕飯」
 ディーが声をかけてもミサキは返事をしなかった。
 また交代で食べに行き、ミサキが食べられそうな物をルイスは部屋に持ってくる。

「ここ、置く。食べる」
 全く返事をしてくれないミサキ。

「ミサキ、水」
「おい、ルイ」
 ディーが止める間もないままルイスはミサキの布団を捲った。

「ミサキ!」
 布団の中で息苦しそうにしているミサキの姿にルイスとディーは驚いた。

 ミサキのおでこを触ったルイスはあまりの熱さに顔をしかめる。
 震えているミサキの身体に急いで布団をかけると、ルイスはタオルを濡らしてミサキのおでこに置いた。
 
「ディー、医師は?」
「聞いてくる」
 宿屋の主人に尋ねると2~3ヶ月に1回だけアンベルの街から医師が来てくれると教えてくれた。

 薬もない。
 解熱剤は新鮮な葉をすぐにすり潰さないと効果が出ないのでビルも持ち歩いていなかった。

「聖女なのに熱は治せないのか?」
 ルイスがグッと拳を握ると、ディーは「無理なのかも」と呟いた。

 ミサキに初めて会った時、ミサキの両手にはカサブタがあった。
 ジョンの怪我は治ったのに、ミサキの手の傷は治らなかったのだ。

「……もしかしたら聖女自身は治せないのかもしれない」
 ディーの仮説に驚いたルイスは熱にうなされるミサキを見ながら眉間にシワを寄せた。
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