異世界で言葉が通じないなんてハードすぎます!

32. 熱

 翌朝目覚めたミサキはルイスに抱きしめられながら眠っていたことに驚いた。
 な、何でこんな事に?

『……大丈夫か?』
 ルイスのひんやりした手がミサキのおでこに添えられ、ようやく自分が熱を出した事に気がついた。
 
 本屋から帰ってきてからすごく寒くて布団にくるまっていたけれど、熱だったんだ。
 
 絵本を見てレオナルドを思い出して、泣いて。
 抱きかかえられて?
 熱を出して?
 むちゃくちゃ迷惑かけている!
 
 テントでは確かに一緒に寝ているけれど、それはテントで、シングルベッドで一緒とはまた話が違って。
 でも熱で仕方なく居てくれたんだろうし。

 頭の中でぐるぐる言い訳が続くミサキ。
 考えれば考えるほど顔が真っ赤になってくる。

『……苦しいか?』
 心配そうにミサキの顔を覗き込むルイスの顔が近い!
 ミサキは恥ずかしくて思わず顔を背けた。

「水、飲め」
 避けられたルイスは少し寂しそうな顔をするとベッドから出てテーブルへ向かう。

 温かかった布団の中に冷たい空気が入り込み、ミサキは身震いした。
 支えられながら起き上がりコップに入った水をもらう。

 何か食べた方がいいだろうとりんごを剥き出すルイス。
 あっという間に皮を剥き、カットしてくれた。

 私よりもルイスの方がりんごの皮剥きがうまい。
 コップとりんごを交換し、シャクっと齧る。
 少し喉に沁みる甘酸っぱいりんごは8分の1食べるのが精一杯だった。
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