異世界で言葉が通じないなんてハードすぎます!
『早く治せ』
 残りのりんごはペロッとルイスの口に。

 ずっと付いていてくれたんだろうな。
 ミサキはりんごを食べ終わり、ガブガブと勢いよく水を飲むルイスをぼんやりと見つめた。

 ……絵本の通りならルイスと結婚。

 ルイスは知っていて面倒を見てくれているのだろう。
 王様からもらった剣でドラゴンを倒すのが勇者の仕事。
 もれなく聖女付きだ。

 絵本のように綺麗な金髪で、もっと美人で、言葉がちゃんと話せる聖女だったらご褒美だっただろうが、こんなのが聖女? と思っているんだろうな。

 でも優しいから面倒を見てくれて、王様には逆らえないからドラゴンの所まで連れて行って、仕方がないから結婚してくれるのだろうか?
 ルイスに申し訳なさすぎる。

「……ごめんなさい」
 目を伏せたまま動かないミサキの頭をルイスは優しく撫でた。

「寝る、OK?」
「……服、えっと」
 着替えたいと言いたかったが言えなかった。
 でもルイスは着替えを出せるようにベッドに荷物を置いてくれる。

「終わる、呼ぶ」
 着替え終わったら呼んでと言うとルイスは部屋を出て行った。

 初めて教会で会ったときは怖い人だと思った。
 あのとき剣と共鳴した気がしたのは、絵本のように剣と聖女が出会ったからなのかもしれない。
 運命の人でビビッときました!
 だったらロマンチックなんだろうけど。

 王様命令できっと断れないんだろうな。
 私に出来ることは迷惑をかけないこと。
 少しでもルイスがドラゴンと戦いやすくなるように怪我はすぐ治す!
 邪魔をしない!

 うん。これでいこう。

 汗でベタベタになった服から寝る時のゆったりした服に替える。
 あぁ、これ洗わないと明日から困るよね。
 ミサキは服と下着を持ち、ベッドから降りようと端に手をついた。
 掛け布団があるのでベッドだと思い込んでいた場所にはベッドはなく、そのまま布団ごと床に落ちる。
 悲鳴を上げる余裕もないまま、ゴン! という音が部屋に響き渡った。
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