瞳の向こうに
第一章

約束

 
「し……秘密だよ」
 人差し指を自分の口元に当てると彼は、透きとおるような瞳で私を見つめた。
 聴こえてくるのは、通りを走る車の音……と人が激しく行き交う靴の音。
「秘密……?」
 私は、彼の瞳の奥に吸い込まれそうになりながら呟いた。

 そう……絶対に秘密だよ」
「絶対に?」
 呟く私に彼はコクっと頷くと、
 「絶対に……
 これは、君と俺との二人だけの秘密」

 彼は、そう言い残し優しく微笑むとくるりと私に背を向け、帽子を深く被り直すと、
大通りの雑踏の中に向かって走り去った。

 そして、私は……ひとり、自分の部屋のドアを開けると小さく息を吐いた。
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