瞳の向こうに
第一章
約束
「し……秘密だよ」
人差し指を自分の口元に当てると彼は、透きとおるような瞳で私を見つめた。
聴こえてくるのは、通りを走る車の音……と人が激しく行き交う靴の音。
「秘密……?」
私は、彼の瞳の奥に吸い込まれそうになりながら呟いた。
そう……絶対に秘密だよ」
「絶対に?」
呟く私に彼はコクっと頷くと、
「絶対に……
これは、君と俺との二人だけの秘密」
彼は、そう言い残し優しく微笑むとくるりと私に背を向け、帽子を深く被り直すと、
大通りの雑踏の中に向かって走り去った。
そして、私は……ひとり、自分の部屋のドアを開けると小さく息を吐いた。
< 1 / 15 >