甘い顔した君にはもう
「ほんと、弥生くんって天使みたいだよね。
クラスのサルみたいな男どもとは大違い」
「は!?なんだよ」と、男子たちが声を上げる。
「もぉ、弥生くん見習って肌のケアでもしなよ!」
「うるせえ、女みたいな男にはなりたくねぇんだわ!」
反論するだけアホがバレるだけなのにね、なんて心の中で思ったりして。
男が肌のケアしたら女みたいになるわけないでしょ、とかも思ったりして。
「んーまあまあ、僕は生まれたときから可愛い顔ってだけで、僕だって一応男なんだからねっ」
「ん~~~!もう弥生くんいい子ッ!!!」
そう言い、女の子は勢いよく早美くんの手を握る。
こういうの、早美くんが女の子みたいだからできる行動なのだろうか。
手を握ってる子、男子と話してるのあんまり見ないし、こんな積極的なのは、早美くんが可愛いから?
それだけで・・・?
凄いなぁ、と感心するのも束の間、早美くんは女の子の握る手を片方の手で握り返してから優しくその手を離す。
「ちょっと僕、ジュースおかわりしてくんねっ」
「私も行くよ!」「私も!!」
「みんなまだ残ってるでしょ、歌ってて」
そうして早美くんは出ていく。
「ちょっと、弥生くんの手握ったのずるいよ!」
「だってなんか可愛くてつい」
「だからってちょっとやりすぎじゃん!」
キャハハと笑う女の子たちは一体、早美くんにどういう扱いをしていく気なのだろうか。
私が気にかけることじゃないのに、今日一日でこんな扱いされている早美くんを思うと、なんだか先々が心配だ。
男子たちも早美くんをあまりよく思っていないみたいだし。
顔は可愛いけど、全然男の子なのに。
「ちょっとジュース」
「おけ~い、いってら」
恵奈に手を振られ、なぜだか私は気になってしまい、早美くんの後を追うように出ていく。