甘い顔した君にはもう




出ていったのはいいものの、変に思われないように、今は普通にジュースを注ぎに行こうと決めて歩き出す。



それで出会わなければそれでいいし、もし会っちゃっても「よう」くらいは言えば変に思われない。



早美くんのオタク達はきっと、私が早美くんの後を追っても、不安な気持ちすら持たないだろうし。



恵奈の言う通り、早美くんとは真反対のこんな怖い顔した私が、早美くんと関わることもないってね。




なーんて軽く考えた矢先・・・



「・・・!!!」



トイレから出てきた早美くんと鉢合わせになる。



言葉も出ずに棒立ちする私と、一生懸命にハンカチで手を拭く早美くんの姿。



「あ、えーと」と、先に口を開いたのは早美くんだ。



近くで見ると本当に天使みたいだ。



トイプードルの子犬のお顔、といえば想像つくだろうか。



「ごめん、じゃ」



と、冷たく挨拶したところで私はやっぱりジュースを注ぎに行くだけの女よ。
早美くんと接点なんか持ったら大変なことになってしまう。



って、クラスメイトなんだから接点持っちゃってるし・・・と今更ながらに思うと腹の底から笑えてくる。



「ジュース注ぎに来たんでしょっ」


「え、あ、ええ」


「僕も今から行くところ、行こ?」


「え?」



分かりやすく嫌な顔をしてしまう私は、クラスのサル男よりも、よっぽど最低な人間だ。



 
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