甘い顔した君にはもう
「でも今日は普通に家帰るねっ」
「あ・・・っそ?」
「うん、謝りたくて追っただけだから」
「い、いや早美くんが謝ることじゃ」
「さっきはマジごめんっ!
僕可愛いからね、割と女の子からは人気者なんだ。
逆の意味でね。
僕と仲良くしようとしてるあの子も悪くはないんだ。
ただ僕がみんなと違うだけ。
だから特別に見えただけ。
それを知りたいと思う独占欲であんな雰囲気になっただけ」
横顔のフェイスライン
大きな喉仏
唇横の小さなほくろ
骨ばった腕に見える太い血管
並んでみると背も高い
それにたまに低い声出すところも
それなのに・・・
_______目が合った。
「可愛い顔」
え・・・?
わ、私ったらつい口にして・・・
驚いた顔をする早美くんにかける言葉がない。
私ってばいつもこういう場を凍らせてしまう。
「ご、ごめん私ったらつい。
こういうのあんまり言ったら失礼よね」
「ほんと?」
「え?」
「ほんと?僕、可愛い?」
「えっ、あ、もも、もちろん」
取り乱す私を大口で笑う早美くんと恵奈。
今日は2人に助けられる日だな。
なんてことを考え、ほのぼのした空間に和んでいるのも束の間。
前から猛スピードで自転車を漕ぐサラリーマンが見えるのだ。
え・・・いやいやいや待って待って。
このままだと私、水溜りの・・・!
ダメだ、避けきれない!
バッシャン!!!!
突如として水溜りの水が私に降りかか・・・
っていない・・?
「ッぶな!!!」
「早美くん!?」
水溜りの水をふりかかったであろう早美くんの髪は、案の定びしょびしょだ。