甘い顔した君にはもう
ようやく私は早美くんを連れて保健室に着くことができた。
「失礼します。あの先生」
と、先生を呼んでも返答がない。
保健室に人の影も見当たらず、私は早美くんをとりあえずソファに座らせる。
「大丈夫?早美くん。
先生、いないみたいだからちょっとここで座っててもらえる?」
「んーーー」
苦しそうだ。
どうにかしないと。
「と、とりあえず熱、測ってもらえる?
冷えピタ探してくるわね」
「ああ・・・」
・・・・・可愛いはキャラなのか?
と、いうくらい今は可愛いというより本性のかっこよさ見え見えだ。
誰にも見せたくないな~なんて思ってしまう私はかなり重いな。
オタクにしては、かなり要注意人物だと我ながらに思うのだ。
「冷えピタ冷えピタ・・・あったあった」
独り言を添えながら平常心を保たせる。
「何度だった?」
「分かんない、見て」
「えっと、じゃあ」
早美くんは自分で体温計を抜かないから、私が抜くということでいいのだろうか・・・?
そっと私は早美くんから体温計を受け取ろうと手を伸ばす。
「はぁ・・・はぁ・・・」
案の定、体温計を手に掴んだ時、早美くんの吐息が私の手の甲にかかるのだ。
変に意識してしまう私は、早美くんに相当失礼なことをしている。
「37.7か・・・わりと高いわ。
今日はもう帰って休んだ方がいいわね」
「ねぇ、もう戻る?」
「え?いや、先生探さないとだから」
「ならまだここいて」
そんな目で私を見ないで。
子犬に見つめられるなんて、そんな耐性ついてない私にとって居てもたってもいられないこの状況。
でも、なぜ。
私は嬉しくて仕方がない。
「授業あるから無理よ。
先生にあとは判断してもらって・・・あ、これ冷えピタ貼る?」
「それよりねぇ、そばにいて」