甘い顔した君にはもう




「なーんか桜依ちゃんって見た目と違って色々怖がり?」



「何言ってんの・・・静かにしてて悪化しちゃう」



「強がってるのって理由ある?」



「静かにしてなさい」



「ねっ僕の話も聞く?」



「・・・・」



少し気になるけど、でも今じゃないのは確か。



私は早美くんを見つめて顔を横に振った。



「はいはーい、病人は寝てますよー」



ようやく素直になった早美くんを見て、私は思わず笑ってしまう。



「なに笑ってんの」



「いや、なんか、可愛いなって」



「・・・・」



あ、軽々しく言わない方がよかったろうか。


また早美くんの表情が冷めたように見えて、焦る。



言われなれているとはいえ、こんな私に言われたら多少はむかつくだろうか。



「ごめん、私ってばいっつも・・・つい言っちゃって。
早美くんは可愛いとか言われて嬉しいわけじゃないわよね。
勝手に出しゃばってごめんなさい」



「いや?別にいいけど」



低い声。


わざとなんかじゃない。



「早美くん、いつからそうやって可愛さ出してるの?」



先ほど謝ったばっかりなのに、言葉がとまらない。



もっと知りたい。
早美くんのこと、もっと知りたいなんて思ってしまっている自分がいる。



「中学の時からだよ」



「へえ。なんかつい最近のことなのね」



「聞く?」



ここまで来たら、聞いてしまおうか。


なんて欲望が強くなっている気がする。



「・・・早美くんがよければ」



「誰にも言わないで、これは二人の秘密だよ」



口元に人差し指を添えて微笑む早美くんはやっぱり儚く、可愛い。



「え・・・・あ、もちろん約束するわ」



二人の秘密と言われ、ときめいてしまう私。
私って、こんなに感情に素直だったかしら。



 
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