甘い顔した君にはもう
放課後、私はいつも通り恵奈の支度を待つ。
「恵奈、なんでいつもこんな遅いのよ。
置き勉してるくせに荷物が多いのはどうにかしなさいよ」
「えぇ~?
だってコスメポーチでしょう?日焼け止めとハンドクリーム。
あとはお菓子の詰め合わせとジュース二本に・・・
どれも必要だも~~ん」
「いや、なんかもう逆に天才だ」
「そゆことっ!」
私はやれやれと思い、恵奈が終わるまでボーッと待つことに専念する。
いつものことだから全然苦でないはずなのに、なんだか今日は胸がざわつく。
ガラガラと教室のドアが開く。
白い白衣が見え、私は何気なく顔を上げるのだ。
「あ、大空さん。
早美くん、目覚めて今まだ保健室にいるんだけど
早美くんの席どこかしら?」
保健室の先生よ。
なぜ今、私を名指しで呼ぶのだ。
空気を呼んでくれなきゃ困る。
「あ、せんせーーい!
大丈夫です、私たちが持っていきますので!!!」
私を押しのけて早美くんオタクの一人が手を挙げる。
私は入る間もなく黙るしかない。
「待ってねえ、補修じゃん今日!」
「無理じゃん私」
「確か先生怖いよね!?」
「やばいやばい急がなきゃ!」
そして嵐のようにオタク達は去っていく。
タイミングがいいのか、悪いのか。
先生を見るとニコニコして私を見ている。
これはもう、私しかいない・・・?
「恵奈ごめん、早美くんの荷物だけ保健室持っていくわね」
「ん、あぁ、なんか私今日一人で帰るわぁ」
「え?どうしてよ」
「雨降りそうだもん、早く帰りたい」
「え!?今日はずっと晴れ予報だよ!?
っていうか本当あなたって・・・もう」
何を言ってもダメだと気づく。
恵奈はきっと気を遣っているんだと思い、
私は何も言い返すことができない。
恵奈の分かりにくい気遣いに心の中でお礼をする。
でも、早美くんへの気持ちはきっとまだバレていない・・・はず。