甘い顔した君にはもう




「失礼しま~~す」


息を整え、私は落ち着いて保健室に入る。



入るとすぐに、早美くんがソファに座ってスマホを
触る姿が目に入った。



「あっ桜依ちゃんじゃん。
あっそれに僕の荷物だ」



「熱、下がったの?」



「まだちょっとだるいけど、
寝たらだいぶよくなったよっ

回復力あるからね、もう微熱」



「でもまだ油断はしないで
あっこれ荷物、持てる?」



「軽いし余裕だよ。
ありがとねっ」



「うん。じゃあお先に」



「ええ!?」と大声をだす早美くんに私は肩が上がってしまう。



「なによ、どうしたの」


「さっき途中で寝ちゃったけど
まだ話してないでしょ、二人の秘密っ」



覚えててくれたことに驚いてしまう。


よく私が知る今までの男性は約束事や私の話など
覚えてくれたことなんてなかったのに。


早美くん、まめなんだな。
ますます好きになってしまう。



「無理しちゃだめよ。
体調悪いんだからまた今度でも」



「今じゃなきゃダメだよ。
それに桜依ちゃんじゃなきゃやだ」



可愛い可愛い、なんて可愛いの。


勢いで頭を撫でてしまいそうだ。


そう思っているのに、感情に出すことはない私。




「ほら、行こ?」



先ほどまで体調が悪かった人間とは思えないほど
元気に私に接する早美くんに驚いてしまうが
本人が言うなら、大丈夫なのかな。


でも、でも


と、考え込んでしまう。



が、これも顔に出すことはない。



「ほんとに歩いて帰れる?
もし悪化しちゃうんだったらやっぱり・・・」



「俺が大丈夫だって言ってんだから気にすることないです」



「あ、はい」



またまた早美くんの二面性にやられ、私は素直に早美くんの後を歩くことにした。




 
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