甘い顔した君にはもう




改めてみるとやはり横顔も美しい。



フェイスライン、男らしいし
なにより私を見下ろす時の流した目が



「見すぎ」



うわっ!!


また私ったら無意識に早美くんを観察してしまっていた。



「ごめん」



「そんな可愛い?」



「ええ、まあそうね。
私よりは・・・」



「俺さ、中学の時、一人の女の子に可愛いって言われて」



早美くんはゆったりと話を始める。



私はそれに前のめりで聞いていたいけれど
平常心を保ち、相槌を打つのに専念し始める。



「俺その時言ったんだよ。
そんなことないよ、〇〇ちゃんの方が可愛いよって」



思い出したくない話なのか
早美くんは突然下を向いて
無理して微笑みだす。



「いや~」と誤魔化しながら話を続ける。



「そしたらその子、その場で泣き出しちゃって。
いや男なのに可愛いとか言われた俺の方が
泣きたいよって思ったけどね?」



「うん・・・」



「んで、その子結構考えこんじゃう子で
難しい女の子だってことは知ってたんだ。

それで、後から聞いたんだけど
その子が発した言葉を安易に否定すると、自分自身のことを否定された気分になっちゃうのよあの子って
俺、何故か聞かされて。

案の定その子は不登校にまでなっちゃって。

俺が、あの子を知らない間に追い込んだんだ」



早美くんは全く悪いことしたわけじゃない。



だけど、泣いた子からしたら
どう思っているかなんて分からない。



それが、人間の怖い部分だ。



今の時代、色んな感情を持つ子は山ほどいる。



みんな見せないだけで、秘密はたくさんある。



きっとその子は「ありがとう」と言ってほしかったのか。



「クラスのみんな、なんだか俺のことを軽蔑し始めて。

俺、性格いいわけじゃないから多少思ったよ?
知らないよ、なんで俺がって」



「うん」



「でも、日々進むにつれて
俺が悪いのかもとか思うようになって。

そしたらある時悪ふざけで可愛いねって俺に話しかけた子がいて。
だから俺言ってやったんだよ。

ほんと?ありがとうって」



「うん」



「そしたらなんて言われたと思う?」



早美くんの表情が怖くなっていく。

狂気に満ちた顔と言えば伝わるだろうか。



「そしたら、調子乗んな女みたいな男がって言われて。

いやいや、それ関係なくない?
俺別に可愛く産まれたつもりないし、誇り持ってなかったし
急にこっちが否定された気になって、まじで腹が立って」



「早美くんちょっと落ち着いて」


「・・・あごめ」





 
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