甘い顔した君にはもう




だけど意外にも綱引きは争奪戦で
去年はじゃんけんで運を勝ち取った。


だからまあ、今年も不安がのしかかるわけで。


手に汗が溜まっていくのが分かる。



「クラス対抗リレーは今年の体力測定の記録から
抜粋した5人!!!」



黒板にはなぜか早美くんのフルネームが。



先月からの転校生がなぜ抜擢されている?
まさか、嫌がらせ?
可愛い顔したやつが失敗するところを見たいとかいう
男子たちの嫌がらせだろうか・・・



私は心配になり、早美くんの席へ視線を送る。



早美くんはというと、いつもと変わらず
和かな顔をして黒板を見つめている。



走りは得意とか?
だとしたらかなりのギャップなのでは?



「ちょっと学級委員長〜
これじゃあ負け確ですよ〜」


とリレーの選手に抜擢された1人が
笑いながら指摘して、早美くんに対し、煽り出す。



そうすると、周りの男子たちも
悪ふざけに加わり、教室中うるさくなる。



ほら、やっぱり嫌がらせ。



秘密を共有したからには
なんだかほっとけない。



だけど私の出番はないようで

「弥生くんっ!
嫌なら嫌って言っていいのよ?」

前の席の見事さんが、煽った男の子を
きつく睨みつける。



でも早美くんはやっぱり天使のように笑顔のまま


「だいじょーぶっ!
なんとかするから応援して?」


なんて可愛く流す。



私にとっては、余裕をかましている
かっこいい早美くんとしか思えないけれど



「分かった!
絶対絶対無理しないでね?」


見事さんには可愛いフィルターのままのようだ。




 
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