甘い顔した君にはもう



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「どんまい桜依」



あんなに、あんなに強気で頑張ったのに。



「どうして私が借り物競走なのよ・・・」


「じゃんけんに一発負けしたってこと」


「恵奈、言わないで・・・
これ以上私を泣かせないで」


「もう諦めなよ」



冷たく言い放す恵奈に私は軽く涙する。


恵奈はじゃんけんで綱引きを勝ち取った
選ばれ者となった。


だからこそ、悲しい。


競技に一人も話せる人がいないなんて
恐ろしく、考えたくない事だ。



それでも分かっている。

今私がとやかく言っても
借り物競走の女子代表に私の名前は
消されることはない。



きっとアニメやドラマの借り物競走のように
難しいお題は、この学校では
出てこないでしょ。



大丈夫よ、きっと。
と、自分で自分をなだめることしか
今の私の気持ちを落ち着かせることは
難しいと考える。



本番までは、まだ時間はある。



もし何がきても大丈夫なように
家帰ったら予習しよ。



こんな時でも私は心配性で真面目な部分が抜けない。




「じゃー、今日からリレーの代表者は
放課後練習するから残ってなー!
部活ある奴はそっち優先ってことで!」



リレー組、気合い入ってるなぁ。


早美くん、大丈夫かしら。



「早美、おまえ帰宅部?」


「うんっ!練習混ぜてねっ」


「練習で可愛くこけたら殴る」



は・・・?

早美くんに何言ってるのよ。
なんて、口に出すことはできないけど、

大丈夫よ、早美くん。
ちゃんと私が見守るからね!

と、相変わらずの弱すぎる私の見守り力。



「おい借り物競走」



ほんと、早美くん、余裕のある表情のままだな。


借り物競走は、走りが速いとかで
決まる競技じゃないし
リレーに勝手に抜擢された早美くんより
全然抱え込むことじゃないのに。


私は本当に弱者だな。




「おい借り物競走のお前聞いてんか?」


「え?私?」


先ほど早美くんに強く言い放っていた男子が
私を見ては険相な人相をしている。



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