甘い顔した君にはもう




17時のチャイムが鳴り、
もうそろそろ帰ろうかなとバッグを肩にかけようとした時・・・



早美くんがこちらを・・・見ている・・・?



え・・・?



心臓が急に早くなるのが分かる。



ダメダメダメ、今はダメ。


私の欲望でここにいるけれど!
近くには見事さんが私にまだ気づかないで早美くんを
見ているのよ・・・!


だからお願いだから、
嫌だけど、
頼むから、

知らないふりして・・・!



力の入らない足を思いっきり動かし
回れ右してみせる。


帰りますから、今、ちゃんと帰りますから。



「桜依ちゃーん?」



早美くんの優しい声。


ああ、終わりました。


見事さんに嫌われるAパターン決定でございます。


あれ、もう嫌われていましたっけ?
頭の中であれやこれやと被害妄想が止まらない。


BパターンもCパターンも用意していない私にとって
これは分かっていたことだ。



でも・・・やっぱり嬉しいの。


嬉しさが悪い方向に行く前に
私から気づかないふりをして
その場から離れた。




 
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