甘い顔した君にはもう




「お願い!!!!
一生のお願いがあるの!!!!」



「・・・私ができることであれば」


こんなにも感情的にお願いされると
後にも引けない。


私は唾をゴクリと飲み込み、
言葉を待つ。



「代役、弥生くんにしてくれないかなぁ!!!」


「・・・え?」



代役に、早美くん?

言われると思わなかった言葉が
私の頭上で永遠にまわっている。



「弥生くんのね、走ってる姿が好きで」



お・・・っと・・・?

これはまさかの私と同じ気持ちの
早美くんオタクが増えている、ということか?


それも見事さんだなんて。


同じ気持ちを共有できるだろうという嬉しさと
何故だかズキズキ傷むこの心と。



「ええっと、私は早美くんに代役を頼めばいいってこと?」


「そう!!!」



ああ、本当に見事さんもギャップが凄いというか。

見た目で判断するのはいけないと思いつつ
どうもそんなことできない。


よく言えば花が似合うような雰囲気の見事さん。
本当の見事さんを紹介するときはきっとこう伝える。

頑固たる信念をもちあわせている、と。


見事さんは私と違い、気持ちが真っすぐであるということ。



「・・・分かったわ。
とりあえず伝えとくわね」


「ありがとう!!!」


「ええ、無理だったらごめんね」


「大丈夫、そしたら私が代役をしてあげる!」


「そう?とっても頼りになるわね」


「じゃあ私は行くけど、まだここで休んでる?」


「そうね、あと少しここにいるわ」


「おっけ!じゃあ無理しないで。
保健室、いけるなら早めに行った方がいいよ!」




軽やかに私から背を向け走り出す見事さんを
見つめつつ、神経は足首に集中している。



「ほんと、痛いやこれ」


病院行きだろうか、これは湿布だろうか
頭の中で考えているうちに
第一種目の騎馬戦が始まり、スターターピストルが鳴る。



 
 
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