甘い顔した君にはもう



「早美くん、ちょっといいかしら」



「ん?
・・・あれ!?桜依ちゃん!?
僕探してた!」


反応がいちいち可愛い。


目をまんまるくさせ、顔全体を使って笑顔を振り撒く。


一気に心が和む・・・


きっと私だけじゃなくて
周りにも、ほんわかする気持ちが
伝染してると思う。



「あれ、えーっと大空も応援しに来てくれたんか!?」



今きっと名前忘れたな。
いつもならツッコミたいところだが
本当に足がズキズキして頭が追いつかない。


田辺くんは、頭に巻いているハチマキを
キュッと強く締める。



「ごめん、あのね・・・実は怪我しちゃって。
大したことはないんだけど、100m走のあとの
借り物競争、代わりに出てくれないかしら」



「それはもちろんいいんだけど
保健室行ったの?」



「大丈夫か!?」という田辺くんとは反対で
冷静な早美くん。



怪我をしていない方の足を心配そうに見る早美くんに
我ながら上手く隠せていたんだと鼻高々と振舞いたくなる。



「後で行こうかと。
とりあえずお願いしないといけないなって」



「なにしてんの?

すぐによくなるわけではないけどさ
テントの方に保健室の先生いるから
早く見てもらわないと」



「あ、ええ、そのつもりよ」



ジッと私を見つめる早美くんに
私は目を逸らさずにはいられなくて
かなり動揺してしまう。



できればこういう時は可愛いキャラを
貫いていてほしい。



「桜依ちゃん?ほら行こ?」



想いが通じたのか、
不意に優しい柔らかい声で私を呼ぶのだ。



だけどやっぱり



「ひとりで行ける」なんて言ったから



「普通に黙って、ねえ、まじで分かってんの?」

と、呆れた笑いと共に冷たい言い方をする早美くんに
またもや動揺する私。




 
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