甘い顔した君にはもう





100m走も無事終わりを迎え、
早美くんに代役をお願いした
借り物競争が始まる。



周りで女の子たちが騒いでいる。



その理由は私にでも分かる。



この学校の借り物競争は
別名、陽キャの集まる競技とも言われ
イケメンが真剣に走る借り物競争が
わが校では大人気なのだ。



そこに私が選ばれたわけだから
(じゃんけん負けですが・・・)
私はとても嫌だった。



怪我をしたのは嫌でしかなかったけど
早美くんに代役をお願いしてよかったと思える。



ま、まあ・・・
見事さんの意見でもあるけれど。



なんだかあの時の見事さん
本当に恋してる顔、してたなぁ。




「借り物競争、選手の入場です」



放送が流れ、周りはもっと騒がしくなる。



テントからチラッと見える早美くんの姿。
肌が白いゆえにあのベビーフェイス。



きっとこの借り物競争で
早美くんにファンが倍増えることでしょう。



それも気がかりではあるけれど
ここはもう腹をくくるしかない。



早美くん、どんなお題引くのかな。



犬を連れて走る、とか
サングラスつけて走る、とか


なんだかどのお題でも絵になりそうだ。



第一走者がスタートする。
早美くんも準備を開始し、ちょうど見える位置に移動してきた。



早美くんは次に走る。



スタート位置についた早美くんに視線を送ってみる。



校庭の砂を足で広げたり、ウォーミングアップしたり
早美くんはかなり気合が入っているように見える。



「ねえ、あの子可愛くない?」

「わかるなんかヒヨコみたい」

「いやトイプードルでしょ」

「髪型でしょそれ」

「いやだって・・・ってほらみて!可愛い!!!」



え、どれどれ?

なんて話に勝手に入ってる私。



・・・!!!


え、うっそ。

早美くんとばっちりと目が合ってしまった。


手をひらひらと振る早美くんに私は心臓が飛び出てしまいそうだ。


手を振り返そうとするも
先ほどの早美くんに心奪われたであろう女の子たちが
私の代わりに手を振り返していた。



早美くんは困った顔しつつ
女の子たちに向けて
もう一度手を振っていた。


なんなら、指ハートなんか
おまけでしちゃってるし。



「ああ、もっと前にいれば・・・」

心の声が漏れていて、隣にいた先生に笑われる。


私としたことが。




 

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