甘い顔した君にはもう




「位置について、よーーい!!!

ドン!!!!」



早美くん達が一斉に走り出す。



砂嵐が消え、早美くんの走る姿がよく見えた。



お題の封筒を開け、さっそく早美くんは目的地に向かって
走り出している。



あの真剣に走る姿
本当にかっこいい。


髪型も相まって、表情が分かりやすい。



あ・・・あれ?


気のせいだと思って、
心の中でさえ思わないようにしていたけど
早美くん、こちらに向かってきているような・・・


期待してはいけないけれど
そう思えば思うほど、
そうであれなんて思ってしまう。


目を瞑るわけにもいかないし
とりあえず私は早美くんではない生徒を見届ける。




「桜依ちゃん!!!!」



息遣いが荒い早美くんが
私に向かって私の名前を呼んでいるではないか。



「先生・・・ッ、
あ、あのすみませんこれで・・・」



先生が紙に書いてあるお題を読み上げる。



「ポニーテールの人・・・?」



私を見る先生。



「あら」なんて言われて。



「怪我、してるしッ
あのッ・・・歩かせないで連れていくので
・・・ッはあ・・はあ
連れて行っていいですか・・・はあ」



苦しいのか、眉間に皺をよせて
先生を見つめる早美くん。



「そうね、いいわよ。
絶対転ばない自信あるの?」



「走らないので・・・」



「あら、好青年ね」



「いや・・・」



先生め・・・
また早美くんを困らせているわね。



「桜依ちゃん、いい?」


困った顔のまま私に問う早美くん。

頭をなでなでしたいくらいには
早美くんの可愛さにやられている。



「いいけど・・・重いわよ」


「ほーら、乗ってくれる?」


「でもやっぱりこれは男らしくなっちゃうよ」



急にきた不安に私は早美くんをさらに困らせてしまう。



「桜依ちゃんにはかっこいいって思われても
問題ないでしょ?」



「いや・・・み、みんなが」



「大丈夫、顔が可愛いから」



「お、おう・・・」
思わず低い声を出してしまう。



「ほら、はーやーく」


急かされ、私は咄嗟に早美くんの背中に乗る。




 

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