甘い顔した君にはもう




近くで騒いでいた新規の早美くんオタクが
私を見て、黙ってしまっていた。


ごめんなさい、と思いつつ
少し特別感を感じてしまいニヤつきそうになる。



我ながら性格が悪いなと思ってしまう。


本当に・・・

見事さんにも悪いな・・・


先ほどの見事さんの恋する乙女のような
可愛い表情が思い浮かぶ。


私は、なにがしたいのか。


あんなに真っすぐに恋してる見事さんに
失礼なことをしているに違いない。



「ねえ早美くん」


「ん?」



首元がすでに黒く日焼けしている早美くんに
いつものごとく私は男らしさを感じていた。



騒がしい応援の声に交じり
早美くんにおんぶされながら、言葉を続ける。



「ポニーテールの子、
たくさんいるよ今日」



「そうだねぇ」



「なんで私なの・・・?」



「んーーーー、
いつもと違う桜依ちゃんの印象が
僕の頭の中に残りすぎたってとこだよね」




早美くんの言った言葉で
私の胸に矢が刺さるこの感覚。


嬉しいのに、なぜか痛い。



ほんのり耳が赤いのは
どうしてですか?


太陽に照らされ、汗の滲む夏


私は距離の近いこの一瞬が
もう少し伸びないかと願ってしまうのだ。



早美くんの優しい落ち着く声も
暖かく大きな背中も
触れるたび、感じるたびに
好きという大胆な気持ちが大きくなっていく。




 
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