甘い顔した君にはもう





指定されたカラオケの部屋に到着する。




ドアのガラス越しから少しだけ見える、楽しそうなクラスのみんなの姿。



やっぱり、一番最後は私たちか・・・。



「恵奈、先に入って」



「なんでよ」



「目立ちたくないのよ」



「あっは~ん、なるほどね。だよね、桜依は何するにも目立っちゃうもんね。
この美人でクールな見た目だもんね~~~ほほ~~ん」




鼻の下を伸ばしながら、下から上を舐めるように見る恵奈にはもううんざりだ。




「もうっ!からかうのやめてよ」



「この見た目なのに、怖がりだもんね~~」



「恵奈、さすがに怒るわよ」



「はいはい、ごめんっちゃ~い」



恵奈がドアを開けると皆一斉にこちらに注目する。



恵奈の後ろに隠れながら入る私には誰も気が付くことのないようにと、気配を消す。



だけど、そんな気にしなくても大丈夫だったようで、みんなすぐに歌に集中する。



そうしてクラスの輪に溶け込むことができた私は、緊張で乾いていた喉に、ストローでジュースを吸い込み続け、潤いを補給。



だけど・・・



私は何も考えずに恵奈の隣に座っていたが、私はあることに気づいて、また緊張が舞い降りる。





「弥生くんって前の学校は女の子たちと仲良くしてた?」


「なんで?」


「だってこんな可愛いから。男子といるより女子といる方が絵になるじゃん」


「そうかなぁ。んーでも、男子とも仲良かったよっ」




隣には、早美くんがいるではないか。



いいのか?いいんですか?



早美くんのオタク達よ、普通は早美くんを挟んで座るべきでは!?




  
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