離婚するつもりだった。
 二年以上戦場で生き延びてきたバーナードであるが、このとき生きるか死ぬかの最前線にいた。

「いや~、明日死ぬかもしれない。今日寝ている間に死ぬかもしれない」

 コンラッドと軽口を叩き合っていた場に「死ななければ良いだけでは?」という無愛想極まりない手紙が届き、走り書きで返事をしたためた。
 その返事が無事に相手に届くかどうかもわからない。
 ただ、なぜ見ず知らずの自分とチェリー(なにがし)が結婚したかというと、母親と妹が遺族年金をあてこんだな、と思い至っていたので、むしろ死を望まれているはずだと信じていたのだ。
 
(俺が首尾よく死なないと、あてにしている金が入らんぞ)

 たった一文、書き終わった直後で近くに砲撃があり、散り散りで逃げ出すことになった。
 落ち着いて手紙を後方に送れたのは、それから数日後。
 受取人である「妻」の元へいつ着くかは、わかったものではなかった。

(届いたときには俺はもう、死んでいるかもしれないな)


 * * * 


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