【マンガシナリオ】コンプレックス同盟
第7話 転校生と文化祭
〇月詠のクラス(朝のホームルーム)
彩美に昨日の晴稀との再会につて直接話そうと思っていた月詠だったが翌日の朝のHRで事件は起こる。
担任「えー、急だが今日からうちのクラスに転校してきた吉田くんだ。皆仲良くするように」
晴稀「吉田晴稀です。中学の途中までこっちにいたので、何人か見たことある顔ぶれがあって嬉しいです。よろしくお願いします」
なんと晴稀が月詠のクラスに転校生としてやって来たのだ。まさかの展開に月詠は目を見開く。
遠目に見える彩美も驚いている様子だ。
月詠(吉田くん、うちの学校に転校してきたんだ…。昨日言ってくれればよかったのに)
そんなことを考える月詠と対照的に笑顔の晴稀。
周りの女子生徒達はイケメンの晴稀に熱い視線を送っている。休み時間になり、晴稀は早速クラスの女子に囲まれて質問攻めにあっていた。
彩美「まさかうちの学校に転校してくるとはね〜…。昨日月詠から吉田と会ったって聞いて驚いたけどさ。つか、なんか吉田ってちょっとチャラくなった?中核の頃はもう少し硬派なイメージだったんだけどなぁ」
ポツリと意味深につぶやき、女子に囲まれている晴稀を遠目で見つめる彩美。
その時。
女子生徒A「ねぇ、吉田くんって彼女いるの?」
女子生徒B「あ!それ私も気になってた〜」
唐突にそ大声でそんなことを言い出したのはクラスでも目立つ女子二人組。どうやらイケメンな晴稀に興味津々の様子。
晴稀「彼女はいないけど好きなヤツはいるよ」
爽やかな笑顔でそう答える晴稀。
その瞬間、なぜか晴稀がこちらに視線を向けるものだから、パチッと視線が合った。
月詠(な、なに…?)
不覚にもドキッとしてしまった月詠。
そんなやり取りを間近で見ていた彩美は「へぇ…」と少し驚いた表情を浮かべていた。
〇月詠のクラス(文化祭の準備中)
担任「今日の午後の授業中は文化祭の準備をするからなー。ちゃんと準備進めるんだぞ」
本日の午後の授業は文化祭準備のため自習だ。
晴稀「なぁ山城、うちのクラスって何するんだ?」
月詠「えっと、一応コスプレ喫茶の予定だよ」
彩美「吉田も文化祭前に転校してくるなんてねぇ〜」
月詠のクラスで晴稀と中学が同じなのは月詠と彩美。
そのためか、担任より晴稀のお世話係に任命されてしまった。
担任「吉田も急に転校になって心細いだろうから、2人でサポートしてやってくれ」
そう言われると断ることもできず、月詠と彩美は素直に承諾する。
月詠「吉田くんだったらどんなコスプレでも似合いそうだよね。何したい?」
晴稀「俺?俺は別に裏方でいいや。それより山城は何のコスプレするの?」
月詠「私?えっと、一応彩美と一緒にピーターパンとティンカーベルをしようかって話してて」
彩美「あ、言っとくけど。月詠がティンカーベルよ」
準備をしながら、そんな話しで盛り上がる。
そう言えば中学時代も、晴稀と疎遠になるまではこんなふうに気さくに話してたなと懐かしい気持ちになる月詠。
その時。
女子生徒C「ねぇねぇ!月詠ちゃん。話の途中でゴメンね。ちょっと聞きたかったんだけどいいかな?」
突然声をかけてきたのは、月詠ともよく話すクラスの女の子だった。
月詠「うん、大丈夫だよ。どうかした??」
女子生徒C「実はさ、私隣のクラスの子から聞いたんだけど……輝都先輩って陽鞠先輩と付き合ってるの??」
月詠「え…?」
突然の言葉に一瞬言葉を失う。
月詠(お姉ちゃんと輝都先輩が…)
彩美「えっと、初耳なんだけどそれ本当なの?」
代わりに彩美が言葉を紡いだ。
女子生徒C「いや私も噂で聞いただけだからね、なんか生徒会室で輝都先輩が陽鞠先輩に告白したとかいうの聞いてさ…!妹の月詠ちゃんなら何か知ってるのかと思ったんだけど…」
月詠「…ううん。お姉ちゃんからは何も聞いてないよ」
女子生徒C「そっかぁ〜。月詠ちゃんが知らないならやっぱりデマかなぁ?急にゴメンね!」
つまらなさそうに去っていく女子生徒の背中を見送り、月詠は胸がザワつく。
月詠(本当にお姉ちゃんと輝都先輩が…?やっぱり輝都先輩が私と仲良くしてたのってお姉ちゃんのことが好きだったから??)
彩美が心配そうに月詠を見つめるが、近くに晴稀がいるからか直接声は掛けてこなかった。
晴稀「……」
そんな2人の様子、いや月詠の様子は晴稀は、黙ったまま見つめていたのだった。
〇学校内(文化祭当日)
月詠1年1組コスプレ喫茶です!ぜひきてくださーい」
晴稀「楽しいからきてねー」
文化祭当日、月詠は晴稀と共に看板を持って校内を巡り、宣伝をする。
晴稀は裏方でと言っていたが、クラス女子全員からの猛反対を受け(イケメンがコスプレをしないとは何事かと有志が立ち上がり)海賊のコスプレに身を包んでいた。
クラスの宣伝係として晴稀は適任で、チラチラと晴稀を見つめる女子の視線を感じる。
かくいう月詠は彩美と共同して作ったティンカーベルの衣装に身を包んでいた。
(ちなみに彩美のピーターパンはカッコいいとかなり好評で、接客係に抜擢されている)
結局、あの後、陽鞠と輝都にの付き合っている疑惑に関して、月詠は勇気が持てなくて陽鞠にも輝都にも聞けずにいた。
月詠(お姉ちゃんのことだから本当に付き合ってたら教えてくれると思うんだけど…)
でも、もしかしたら月詠のことを考えてしばらく秘密にしているのかもしれない。
そう思うと、なんだか少し近づいていたと思っていた陽鞠との間に距離を感じてしまう月詠。
輝都に関しても、時々廊下で見かけることはあるものの忙しそうで声をかけづらい日々が続いていた。
晴稀「山城、妖精の衣装似合うな」
ストレートに言葉にしてくる晴稀に照れながら「ありがとう」とお礼を言った、その時。
陽鞠「あ〜!月詠いた〜!!可愛いー!すっごい似合ってる」
月詠「お姉ちゃん、輝都先輩…」
鉢合わせたのは、輝都と陽鞠だった。
2人で行動していることにチクンと胸が痛む。
陽鞠「生徒会の仕事で巡回中だったの。月詠のクラスに行ったら彩美ちゃんが、今校内を宣伝中ですって教えてくれたから会えるかもって思ってたんだ〜。会えてよかった。ね、谷くん」
輝都「ですね。てか、月詠、1組大盛況みたいだな」
巡回中だという2人。
生徒会の仕事だからと聞いてホッとしたのも束の間、たしかに前より心なしか距離が近いような気がして嫌な方向に考えてしまう。
輝都「…てか、君」
晴稀「はい。同じ高校になりました。改めましてよろしくお願いします、先輩」
若干、煽ったようなその言い方に輝都の表情がいささかかたくなった。
陽鞠「へぇ〜!そうなんだ。月詠の姉の山城陽鞠です。よろしくね。えっと…」
晴稀「吉田晴稀です。実は山城とは途中まで中学一緒なんで、先輩のことは俺も知ってます」
陽鞠に対してはいつもの人の良い感じの晴稀。
陽鞠「そうだったの!わぁ、それはまた偶然…」
チラリとなぜか輝都に視線を向ける陽鞠。
何だか輝都を気遣っているようにも見えた。
晴稀「じゃあ、俺たちクラスの仕事があるんでこのへんで!山城行こう」
月詠「う、うん。それじゃあお姉ちゃん、先輩、また」
ぐいっと腕を引かれ、晴稀が月詠を軽く引っ張る。
慌てて晴稀についていく月詠を輝都が複雑そうな表情で見ていたことに本人は気づいていなかった。
〇裏庭(文化祭中)
晴稀「ちょっと休憩しよう。はい、これ」
月詠「吉田くん、ありがとう」
晴稀は月詠を裏庭に連れ出していた。
晴稀からお茶を受け取り、笑顔になる月詠。
少しメインの通路と外れているこの場所は人気がなく、静かに休むにはうってつけだ。
以前、月詠が彩美が休みの時に1人でお昼を食べていた場所でもある。
晴稀「あのさ、この前ショッピングモールで会った時も思ってたんだけど…山城って、あの先輩のこと好きなのか?」
月詠「…っ!?」
晴稀「やっぱり。山城わかりやすいな」
ズバリ言い当てられ、体が固まってしまう月詠を見て晴稀は苦笑いを浮かべた。
月詠「…ハァ。秘密にしてね。もし、本当にお姉ちゃんと付き合ってるなら知られたくないの。気まずくなるの嫌だし…」
晴稀「山城はそれでいいのか?」
チクン。
ストレートな晴稀の問いかけに胸が痛んだが、「だってお姉ちゃんだもん。しょうがないよ」と気持ちを押し殺す月詠。
月詠「だって、先輩がお姉ちゃんのこと好きならしょうがないし…。それに私、こういうの慣れてるから…」
なるべく笑顔で答えたつもりだったが、晴稀の真剣な表情に言葉が詰まった。
晴稀「…まぁ、山城が決めたことならしょうがないよ。じゃあさ、俺の話も聞いてくれるか?」
月詠「…?」
晴稀「山城、俺が中1の時、話したいことあるって声かけたの覚えてるか?」
月詠「うん…」
彩美とも前に話題に上がっていたが、あの日を境になぜか晴稀と気まずくなってしまったからよく覚えている。
晴稀「あの時、山城は俺の言いたいことが、山城先輩のことって勘違いしてたけどさ…。俺が言いたかったのは山城のことが好きってことだったんだよ」
月詠「え…」
晴稀の言葉に、月詠は目を見開いた。
晴稀「あん時は俺もガキで、山城からそう言われて脈ナシなの悟っちゃってさ。あの日からお前のこと避けてたんだ。でも、急に転校することになって、やっぱり気持ちを伝えてなかったことずっと後悔してた」
晴稀「山城があの先輩のこと意識してんのは、すぐわかったし、また負け戦かって思っそれでも今回は言うって決めてたから。好きだよ、山城。中学からずっと」
月詠「…ッ」
こんなにもまっすぐに「好き」と言われるのが初めてで月詠は不覚にもドキドキと心臓が高鳴るのを感じる。
晴稀「ま、山城の気持ちは知ってるからさ。すぐに返事してほしいわけじゃない。ただ、俺のことも考えてほしいなって思っただけ…。っと、長居しすぎたかな?そろそろクラス戻ろうぜ」
月詠「うん…」
その後は、晴稀も月詠に負担をかけたくないのか、何もなかったように振る舞ってくれた。
晴稀から告白されるのは予想外で、どうしていいかわからなくなる月詠。
でも、輝都と陽鞠のことも頭から離れず、内心頭を抱えてしまったのだった。
彩美に昨日の晴稀との再会につて直接話そうと思っていた月詠だったが翌日の朝のHRで事件は起こる。
担任「えー、急だが今日からうちのクラスに転校してきた吉田くんだ。皆仲良くするように」
晴稀「吉田晴稀です。中学の途中までこっちにいたので、何人か見たことある顔ぶれがあって嬉しいです。よろしくお願いします」
なんと晴稀が月詠のクラスに転校生としてやって来たのだ。まさかの展開に月詠は目を見開く。
遠目に見える彩美も驚いている様子だ。
月詠(吉田くん、うちの学校に転校してきたんだ…。昨日言ってくれればよかったのに)
そんなことを考える月詠と対照的に笑顔の晴稀。
周りの女子生徒達はイケメンの晴稀に熱い視線を送っている。休み時間になり、晴稀は早速クラスの女子に囲まれて質問攻めにあっていた。
彩美「まさかうちの学校に転校してくるとはね〜…。昨日月詠から吉田と会ったって聞いて驚いたけどさ。つか、なんか吉田ってちょっとチャラくなった?中核の頃はもう少し硬派なイメージだったんだけどなぁ」
ポツリと意味深につぶやき、女子に囲まれている晴稀を遠目で見つめる彩美。
その時。
女子生徒A「ねぇ、吉田くんって彼女いるの?」
女子生徒B「あ!それ私も気になってた〜」
唐突にそ大声でそんなことを言い出したのはクラスでも目立つ女子二人組。どうやらイケメンな晴稀に興味津々の様子。
晴稀「彼女はいないけど好きなヤツはいるよ」
爽やかな笑顔でそう答える晴稀。
その瞬間、なぜか晴稀がこちらに視線を向けるものだから、パチッと視線が合った。
月詠(な、なに…?)
不覚にもドキッとしてしまった月詠。
そんなやり取りを間近で見ていた彩美は「へぇ…」と少し驚いた表情を浮かべていた。
〇月詠のクラス(文化祭の準備中)
担任「今日の午後の授業中は文化祭の準備をするからなー。ちゃんと準備進めるんだぞ」
本日の午後の授業は文化祭準備のため自習だ。
晴稀「なぁ山城、うちのクラスって何するんだ?」
月詠「えっと、一応コスプレ喫茶の予定だよ」
彩美「吉田も文化祭前に転校してくるなんてねぇ〜」
月詠のクラスで晴稀と中学が同じなのは月詠と彩美。
そのためか、担任より晴稀のお世話係に任命されてしまった。
担任「吉田も急に転校になって心細いだろうから、2人でサポートしてやってくれ」
そう言われると断ることもできず、月詠と彩美は素直に承諾する。
月詠「吉田くんだったらどんなコスプレでも似合いそうだよね。何したい?」
晴稀「俺?俺は別に裏方でいいや。それより山城は何のコスプレするの?」
月詠「私?えっと、一応彩美と一緒にピーターパンとティンカーベルをしようかって話してて」
彩美「あ、言っとくけど。月詠がティンカーベルよ」
準備をしながら、そんな話しで盛り上がる。
そう言えば中学時代も、晴稀と疎遠になるまではこんなふうに気さくに話してたなと懐かしい気持ちになる月詠。
その時。
女子生徒C「ねぇねぇ!月詠ちゃん。話の途中でゴメンね。ちょっと聞きたかったんだけどいいかな?」
突然声をかけてきたのは、月詠ともよく話すクラスの女の子だった。
月詠「うん、大丈夫だよ。どうかした??」
女子生徒C「実はさ、私隣のクラスの子から聞いたんだけど……輝都先輩って陽鞠先輩と付き合ってるの??」
月詠「え…?」
突然の言葉に一瞬言葉を失う。
月詠(お姉ちゃんと輝都先輩が…)
彩美「えっと、初耳なんだけどそれ本当なの?」
代わりに彩美が言葉を紡いだ。
女子生徒C「いや私も噂で聞いただけだからね、なんか生徒会室で輝都先輩が陽鞠先輩に告白したとかいうの聞いてさ…!妹の月詠ちゃんなら何か知ってるのかと思ったんだけど…」
月詠「…ううん。お姉ちゃんからは何も聞いてないよ」
女子生徒C「そっかぁ〜。月詠ちゃんが知らないならやっぱりデマかなぁ?急にゴメンね!」
つまらなさそうに去っていく女子生徒の背中を見送り、月詠は胸がザワつく。
月詠(本当にお姉ちゃんと輝都先輩が…?やっぱり輝都先輩が私と仲良くしてたのってお姉ちゃんのことが好きだったから??)
彩美が心配そうに月詠を見つめるが、近くに晴稀がいるからか直接声は掛けてこなかった。
晴稀「……」
そんな2人の様子、いや月詠の様子は晴稀は、黙ったまま見つめていたのだった。
〇学校内(文化祭当日)
月詠1年1組コスプレ喫茶です!ぜひきてくださーい」
晴稀「楽しいからきてねー」
文化祭当日、月詠は晴稀と共に看板を持って校内を巡り、宣伝をする。
晴稀は裏方でと言っていたが、クラス女子全員からの猛反対を受け(イケメンがコスプレをしないとは何事かと有志が立ち上がり)海賊のコスプレに身を包んでいた。
クラスの宣伝係として晴稀は適任で、チラチラと晴稀を見つめる女子の視線を感じる。
かくいう月詠は彩美と共同して作ったティンカーベルの衣装に身を包んでいた。
(ちなみに彩美のピーターパンはカッコいいとかなり好評で、接客係に抜擢されている)
結局、あの後、陽鞠と輝都にの付き合っている疑惑に関して、月詠は勇気が持てなくて陽鞠にも輝都にも聞けずにいた。
月詠(お姉ちゃんのことだから本当に付き合ってたら教えてくれると思うんだけど…)
でも、もしかしたら月詠のことを考えてしばらく秘密にしているのかもしれない。
そう思うと、なんだか少し近づいていたと思っていた陽鞠との間に距離を感じてしまう月詠。
輝都に関しても、時々廊下で見かけることはあるものの忙しそうで声をかけづらい日々が続いていた。
晴稀「山城、妖精の衣装似合うな」
ストレートに言葉にしてくる晴稀に照れながら「ありがとう」とお礼を言った、その時。
陽鞠「あ〜!月詠いた〜!!可愛いー!すっごい似合ってる」
月詠「お姉ちゃん、輝都先輩…」
鉢合わせたのは、輝都と陽鞠だった。
2人で行動していることにチクンと胸が痛む。
陽鞠「生徒会の仕事で巡回中だったの。月詠のクラスに行ったら彩美ちゃんが、今校内を宣伝中ですって教えてくれたから会えるかもって思ってたんだ〜。会えてよかった。ね、谷くん」
輝都「ですね。てか、月詠、1組大盛況みたいだな」
巡回中だという2人。
生徒会の仕事だからと聞いてホッとしたのも束の間、たしかに前より心なしか距離が近いような気がして嫌な方向に考えてしまう。
輝都「…てか、君」
晴稀「はい。同じ高校になりました。改めましてよろしくお願いします、先輩」
若干、煽ったようなその言い方に輝都の表情がいささかかたくなった。
陽鞠「へぇ〜!そうなんだ。月詠の姉の山城陽鞠です。よろしくね。えっと…」
晴稀「吉田晴稀です。実は山城とは途中まで中学一緒なんで、先輩のことは俺も知ってます」
陽鞠に対してはいつもの人の良い感じの晴稀。
陽鞠「そうだったの!わぁ、それはまた偶然…」
チラリとなぜか輝都に視線を向ける陽鞠。
何だか輝都を気遣っているようにも見えた。
晴稀「じゃあ、俺たちクラスの仕事があるんでこのへんで!山城行こう」
月詠「う、うん。それじゃあお姉ちゃん、先輩、また」
ぐいっと腕を引かれ、晴稀が月詠を軽く引っ張る。
慌てて晴稀についていく月詠を輝都が複雑そうな表情で見ていたことに本人は気づいていなかった。
〇裏庭(文化祭中)
晴稀「ちょっと休憩しよう。はい、これ」
月詠「吉田くん、ありがとう」
晴稀は月詠を裏庭に連れ出していた。
晴稀からお茶を受け取り、笑顔になる月詠。
少しメインの通路と外れているこの場所は人気がなく、静かに休むにはうってつけだ。
以前、月詠が彩美が休みの時に1人でお昼を食べていた場所でもある。
晴稀「あのさ、この前ショッピングモールで会った時も思ってたんだけど…山城って、あの先輩のこと好きなのか?」
月詠「…っ!?」
晴稀「やっぱり。山城わかりやすいな」
ズバリ言い当てられ、体が固まってしまう月詠を見て晴稀は苦笑いを浮かべた。
月詠「…ハァ。秘密にしてね。もし、本当にお姉ちゃんと付き合ってるなら知られたくないの。気まずくなるの嫌だし…」
晴稀「山城はそれでいいのか?」
チクン。
ストレートな晴稀の問いかけに胸が痛んだが、「だってお姉ちゃんだもん。しょうがないよ」と気持ちを押し殺す月詠。
月詠「だって、先輩がお姉ちゃんのこと好きならしょうがないし…。それに私、こういうの慣れてるから…」
なるべく笑顔で答えたつもりだったが、晴稀の真剣な表情に言葉が詰まった。
晴稀「…まぁ、山城が決めたことならしょうがないよ。じゃあさ、俺の話も聞いてくれるか?」
月詠「…?」
晴稀「山城、俺が中1の時、話したいことあるって声かけたの覚えてるか?」
月詠「うん…」
彩美とも前に話題に上がっていたが、あの日を境になぜか晴稀と気まずくなってしまったからよく覚えている。
晴稀「あの時、山城は俺の言いたいことが、山城先輩のことって勘違いしてたけどさ…。俺が言いたかったのは山城のことが好きってことだったんだよ」
月詠「え…」
晴稀の言葉に、月詠は目を見開いた。
晴稀「あん時は俺もガキで、山城からそう言われて脈ナシなの悟っちゃってさ。あの日からお前のこと避けてたんだ。でも、急に転校することになって、やっぱり気持ちを伝えてなかったことずっと後悔してた」
晴稀「山城があの先輩のこと意識してんのは、すぐわかったし、また負け戦かって思っそれでも今回は言うって決めてたから。好きだよ、山城。中学からずっと」
月詠「…ッ」
こんなにもまっすぐに「好き」と言われるのが初めてで月詠は不覚にもドキドキと心臓が高鳴るのを感じる。
晴稀「ま、山城の気持ちは知ってるからさ。すぐに返事してほしいわけじゃない。ただ、俺のことも考えてほしいなって思っただけ…。っと、長居しすぎたかな?そろそろクラス戻ろうぜ」
月詠「うん…」
その後は、晴稀も月詠に負担をかけたくないのか、何もなかったように振る舞ってくれた。
晴稀から告白されるのは予想外で、どうしていいかわからなくなる月詠。
でも、輝都と陽鞠のことも頭から離れず、内心頭を抱えてしまったのだった。