先輩と、コーヒーと


「えっと、確かここの角を曲がって……」


1ヶ月前の自分の記憶を頼りに、私は歩を進める。


しばらく歩いていると、頬にポツっと冷たいものが当たった。


「……え?」


空を仰ぐと、雨粒が次々と落ちてくる。


「うそ、雨!?」


突然の雨に、私はスクールバッグを頭の上にのせ、慌てて駆け出す。


──カランコロン。


「いらっしゃいませー!」


急いでホワイト・カフェに入ると、この間の女性店員さんが声をかけてくれた。


「ああ、濡れちゃった……」


私が濡れた髪や制服を拭こうと、スクールバッグからハンカチを取り出したとき。


「……良かったら、これ使って」

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