先輩と、コーヒーと
私の目の前に琉星先輩がやって来て、バスタオルを渡してくれた。
「でも……悪いですよ」
「悪くない。中間テスト前なのに、風邪でも引いたら大変だろ?」
琉星先輩……。
先輩の優しさに、胸の奥がじわりと温かくなる。
先輩、自分に告白してきた女の子のことを、いつも容赦なくバッサリと振るって聞いたから。
もしかして、冷たい人なのかと思っていたけど……やっぱり優しいな。
「ありがとうございます! それじゃあ、お借りしますね」
私は先輩からバスタオルを受け取り、雨で濡れたところを拭いていく。
「外、雨降ってるから冷えただろ? 何飲む? この前来たときみたいに、ホットコーヒー?」
私、まだ一度しかお店に来ていないのに。
先輩、この間私が来店したことを覚えてくれてるんだ。
「はい。この前と同じ、ホットコーヒーを頂きたいです。あれ、すごく美味しかったので」
「ほんとに? 嬉しいなあ」
先輩の優しい微笑みを見た瞬間、私の心がきゅっと締めつけられる。
うわ……普段クールな先輩の貴重な笑顔、素敵すぎてクセになりそう。
先輩の笑った顔、もっと見てみたいな。