先輩と、コーヒーと
「なあ。アンタ、どうして最近店に来ないんだよ?」
鋭い目つきでこちらを見てくる先輩に、心臓がどくんと跳ねる。
先輩の顔を見られなくて、私は咄嗟に下を向く。
「……」
「黙ってないで、何か言えよ」
私の腕を掴む手が、少し強くなった。
「い、いいじゃないですか。お店に行こうと行かないでおこうと、私の勝手です……!」
早口でそう言うと私は、腕を掴んでいる先輩の手を振りきって、その場から走り出す。
ああ、せっかく琉星先輩が話しかけてくれたのに。
先輩にあんな態度をとるなんて、私ってほんと可愛くない。
それに……私は、あれから先輩のことを避けているはずなのに。
久しぶりに学校で先輩に会えたら、嬉しいって思ってしまう自分がいる。
ドクドクドクドク……。
先輩に会ってから、苦しいくらいに胸の鼓動が激しく高鳴って。頬だって、熱い。
私の意思とは違って、自分の体はほんと正直だ。
琉星先輩を見ただけでこんなふうになるなんて、私……いつの間に先輩のことがこんなにも好きになってしまっていたんだろう。
先日、先輩には理帆さんという人がいるって知ってしまったから。
今さら気持ちを自覚したって、もう遅いのに……。