先輩と、コーヒーと


普段は表通りしか歩いていない私は、角を曲がって一度も通ったことのない裏道を通ってみることに。


「ふぅ、暑い……」


9月も半ばに差し掛かったというのに、まだ夏のように暑く、私は頬を伝った汗を拭う。


しばらく裏道をあてもなく歩いていると住宅街に入り、どこからかコーヒーの香りが漂ってくる。


「良い香り……」


その匂いに誘われるようにして私が歩いていると、一軒の小さなお店に辿りついた。


看板に書かれた店名は『ホワイト・カフェ』


人通りの少ない静かな住宅街の隅に、こんなお店があったんだ。


──カランコロン。


何となく気になった私が勇気を出して扉を開けてみると、耳に心地いいドアベルの音がし、コーヒーの香ばしい香りが鼻を掠める。

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