先輩と、コーヒーと
さらに数日が経った、ある日の学校の休み時間。
「ちょっと、柚希! 大変だよ」
お手洗いから戻ってきた紗梨が、焦った様子で私に声をかけてきた。
「大変って、どうしたの? 紗梨」
「あのね、柚希。白井先輩が……オーストラリアに行くって……!」
「え!?」
琉星先輩が、オーストラリアに……?
ガンッと、頭を殴られたような衝撃が走った。
「何それ、ほんとなの? 紗梨」
暑くもないのに背中には汗が伝い、ドキドキと心臓が早鐘を打つ。
「うん。あたし今そこで、2年生の先輩たちが話しているのを聞いて……」
「……っ」
先輩たちが、そんな話を……。
突然のことに頭の中が混乱して、私は言葉が出なくなる。
オーストラリアに行くって、琉星先輩が日本からいなくなるってことだよね?
そもそも『ホワイト・カフェ』は、先輩の伯父さん夫婦のお店なんだから。
先輩のお父さんの転勤が決まって、それでオーストラリアに引っ越すってことなのかな?
そう思うと、体の中がスーッと冷たくなっていく。