先輩と、コーヒーと
どうしよう。私、コーヒーなんて飲めないのに。
美味しそうな香りにつられて、つい頼んでしまった。
せめて、甘いカフェオレとかココアにしたら良かったかな。
それに今日は暑いから、ホットじゃなくてアイス……って、注文したあとで後悔したってもう遅いけど。
私は、ぐるっと店内を見まわしてみる。
5人ほどが座れるカウンター席と、テーブル席が4つ。それらの席は、お客さんでほぼ埋まっていた。
古い木製のテーブルと椅子、アンティーク調の家具が並び、高い天井からはランプが吊り下がっている。
ここは、昔ながらの喫茶店という感じで、店は狭いけど何ともほっとする空間だ。
「琉星くん、ブレンドひとつ」
「はい」
先ほど私のオーダーをとった女性に言われ、カウンター内にいる一人の少年が返事をする。
うわ、あの人……若手のイケメン俳優さんみたいに整った顔つきで、すごくかっこいい。
名前、琉星さんっていうんだ。
店員の彼のことが気になった私がじっと見つめていると、こちらを向いた彼と目が合ってしまった。