傷だらけの令嬢〜逃げ出したら優しい人に助けられ、騎士様に守られています〜

2

-ギィ-

扉が開く音がする。私がいる部屋は使用人達が使っているような部屋ではなく、地下の奥深くの物置のような所だ。扉の建て付けが悪いのか、開閉時に変な音がする。
窓もなく、灯りもロウソクしかなく、いつも薄暗い。


「ソフィア、起きてる?」


『ジャック、どうしたの?』

「どうしたのじゃないよ。見せて。
うわ… 酷いな…
こんなの人間のすることじゃない!」

『ここへ来てはいけないわジャック。見つからないうちに早く行って』

ジャックは私より3つ年上の男の子だった。この邸に来て酷い扱いを受ける私を、気にかけてくれるうちの一人。
 

「大丈夫。すぐに戻れば見つからないから。ソフィア、これを。

『これ…でも、いつもどうして?』

ジャックは私が父や義姉から暴力を受けると、塗り薬をこっそり持って来てくれる。
薬も高いだろうに、私なんかのために

「本当はきちんと手当てしたいけど…」

『ううん、私なんかのために』

「そんなこと言わないで、とりあえずこの薬だけでも塗って。少しは痛みがましになるから。ごめん
俺がもっと大人だったら…」

ジャックは眉間に皺を寄せて、
いつも自分を責めていた。
ジャックは何も悪くないのに。

『どうしてジャックが謝るの? ありがとうジャック。いつもほんとに… 』

「あいつら許さない!いつか俺が━━」

『ジャックそんなことを言ってはいけないわ。私は大丈夫だから、ね?もう行って』

「また来る」

そう言い残してジャックは部屋から出て行った。


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