傷だらけの令嬢〜逃げ出したら優しい人に助けられ、騎士様に守られています〜
26
「ソフィア。顔をよく見せて。どうして顔を逸らすんだ?
私のことが嫌いか…?怖いか?
職業柄、目つきが鋭くなるのは仕方がないのだ。
先程溜め息をついたのは…ソフィアが何度
も顔を逸らすから…嫌われているのかと…」
何度も愛撫するように唇をなぞられて思考が停止する。
ゆっくりと話しかけられているのだけれど、瞳の奥には獰猛な何かが見え隠れする。
「き、嫌いになんてなれません。」
「嫌いじゃない?じゃあどうして何度も顔を逸らす?もっとよく見たいのに…」
「そ、それは…恥ずかしいからです!…
んっ」
話している時もグレッグ様の親指は動きを止めることはなく、唇から口の中へと侵入されそうになり、口を塞ごうとしたので変な声が出た。
「ならば、恥ずかしくないように慣れてもらおう」
親指の動きがピタリと止まったと思うと、グレッグ様の顔が近づいてくる。
この後予想される行為を受け入れるように、そっと瞼を閉じた。
直後ガタン!と馬車が大きく揺れた。
「きゃっ」
「大丈夫か?」
「申し訳ありません。何か踏んだようで。お怪我はありませんか?」
御者の問いかけに「大丈夫だ」とグレッグは答える。
グレッグはそこでふと自身の膝の上に、横抱きで乗るような形でソフィアを抱き留めていることに気づく。
先程の馬車の揺れで体勢が傾き、ソフィアを守るように自身の元へ引き寄せたからだ。
親指に柔らかな感触が残っている。
自分が何をしようとしていたかを思い出して歯がゆむ。
抜け出そうと動くソフィアをそのまま囲いこむように両腕で優しく、かっちりとホールドする。
「あの?」
自身の胸に顔をうずめる形となり、ソフィアの体温が向上するのを感じる。
あぁ、かわいい…
そっと金色の髪に口づけを落とす。
「ソフィア…その…目の見えない人は、相手の顔を認識する為に、顔を指でなぞって認識しようとする」
突然、何の話を始めたのか分からないソフィアは、黙って耳を傾ける。
「私も同じだ」
「グレッグ様は目が…?」
驚きグレッグを見上げようとするソフィアだったが、グレッグの腕はびくともしなかった。
「いや、視力はいい方だ。だが、指で認識しようと…していたのだ。その方がよく分かるのだ。
先程のことは…他意はない。
その…ソフィアが知らないかもしれないが一般的なことだ。
だが、間違っても他の輩には触れさせてはいけないよ」
「はい…」
「また揺れるかもしれないから、このままここにいるといい」
「こ、このままですか?」
「あぁ、着いたら起こすから眠るといい」
「む、むりです」
グレッグ様はどうしてしまったのだろう。
先程のことを思い出して、恥ずかしくて顔を合わす自信がなかった。
私は、グレッグ様と…何をしようとしたの。ふしだらな女だと思われたかもしれない。
でも居心地がいい。髪に柔かな感触がしたけれど何をしたのだろう。
少しだけ、このままグレッグ様の優しさに甘えよう。
そんなに時間はかからないはずだから。
「すぐに慣れる」とグレッグはソフィアの髪を優しく撫でる。
グレッグは、いったい自分でも何を言っているのかと呆れていた。
女性に興味なんてなかったのに。
色恋沙汰など無縁のことだと思っていた。
彼女の柔らかな感触が残る親指を、自身の唇にそっと添えて、ソフィアを守ろうと改めて心に誓った
すぐに到着すると思っているソフィアの気持ちとは裏腹に、馬車は迂回してゆっくりと時間をかけて進んでいた。
グレッグが合図をするまで、迂回する手筈となっていた。
ソフィアが落ち着くまで、傍にいようとのグレッグの気遣いだった。
だが当初の想いとは別の感情が湧いてきて、しばらく迂回することになった。
私のことが嫌いか…?怖いか?
職業柄、目つきが鋭くなるのは仕方がないのだ。
先程溜め息をついたのは…ソフィアが何度
も顔を逸らすから…嫌われているのかと…」
何度も愛撫するように唇をなぞられて思考が停止する。
ゆっくりと話しかけられているのだけれど、瞳の奥には獰猛な何かが見え隠れする。
「き、嫌いになんてなれません。」
「嫌いじゃない?じゃあどうして何度も顔を逸らす?もっとよく見たいのに…」
「そ、それは…恥ずかしいからです!…
んっ」
話している時もグレッグ様の親指は動きを止めることはなく、唇から口の中へと侵入されそうになり、口を塞ごうとしたので変な声が出た。
「ならば、恥ずかしくないように慣れてもらおう」
親指の動きがピタリと止まったと思うと、グレッグ様の顔が近づいてくる。
この後予想される行為を受け入れるように、そっと瞼を閉じた。
直後ガタン!と馬車が大きく揺れた。
「きゃっ」
「大丈夫か?」
「申し訳ありません。何か踏んだようで。お怪我はありませんか?」
御者の問いかけに「大丈夫だ」とグレッグは答える。
グレッグはそこでふと自身の膝の上に、横抱きで乗るような形でソフィアを抱き留めていることに気づく。
先程の馬車の揺れで体勢が傾き、ソフィアを守るように自身の元へ引き寄せたからだ。
親指に柔らかな感触が残っている。
自分が何をしようとしていたかを思い出して歯がゆむ。
抜け出そうと動くソフィアをそのまま囲いこむように両腕で優しく、かっちりとホールドする。
「あの?」
自身の胸に顔をうずめる形となり、ソフィアの体温が向上するのを感じる。
あぁ、かわいい…
そっと金色の髪に口づけを落とす。
「ソフィア…その…目の見えない人は、相手の顔を認識する為に、顔を指でなぞって認識しようとする」
突然、何の話を始めたのか分からないソフィアは、黙って耳を傾ける。
「私も同じだ」
「グレッグ様は目が…?」
驚きグレッグを見上げようとするソフィアだったが、グレッグの腕はびくともしなかった。
「いや、視力はいい方だ。だが、指で認識しようと…していたのだ。その方がよく分かるのだ。
先程のことは…他意はない。
その…ソフィアが知らないかもしれないが一般的なことだ。
だが、間違っても他の輩には触れさせてはいけないよ」
「はい…」
「また揺れるかもしれないから、このままここにいるといい」
「こ、このままですか?」
「あぁ、着いたら起こすから眠るといい」
「む、むりです」
グレッグ様はどうしてしまったのだろう。
先程のことを思い出して、恥ずかしくて顔を合わす自信がなかった。
私は、グレッグ様と…何をしようとしたの。ふしだらな女だと思われたかもしれない。
でも居心地がいい。髪に柔かな感触がしたけれど何をしたのだろう。
少しだけ、このままグレッグ様の優しさに甘えよう。
そんなに時間はかからないはずだから。
「すぐに慣れる」とグレッグはソフィアの髪を優しく撫でる。
グレッグは、いったい自分でも何を言っているのかと呆れていた。
女性に興味なんてなかったのに。
色恋沙汰など無縁のことだと思っていた。
彼女の柔らかな感触が残る親指を、自身の唇にそっと添えて、ソフィアを守ろうと改めて心に誓った
すぐに到着すると思っているソフィアの気持ちとは裏腹に、馬車は迂回してゆっくりと時間をかけて進んでいた。
グレッグが合図をするまで、迂回する手筈となっていた。
ソフィアが落ち着くまで、傍にいようとのグレッグの気遣いだった。
だが当初の想いとは別の感情が湧いてきて、しばらく迂回することになった。